『朝日新聞』山梨版2009年10月30日

まちづくりが課題 公立大学法人になった都留文科大


今年4月、「都留市立」から「公立大学法人(地方独立行政法人)」になった都留文科大学(都留市田原3丁目)。人口約3万2200人の都留市は自治基本条例で、「知的資源を活用し、教育首都を目指したまちづくり」と位置づけている。一方で、少子化が進む中、大学としての生き残り策や、地域社会への貢献策、「学園のまちづくり」も課題になっている。

1953年に前身の県立臨時教員養成所として設立。その後、教員養成系大学として知られている。しかしほかの大学との競争も激しくなっている。

全体の受験者数を合格者数で割った競争倍率は2006年度に3.6倍だったが、翌年から09年度までは2.2〜2.6倍で推移。07、08年度に連続ダウンした後、09年度にようやく、志願者4598人、受験者2942人で、ともに増加に転じた。

独法化のメリットについて、高田理孝副学長は「まだ過渡期なので、教員側もわかっていない部分があり、手探り状態。1年間なり、2年間くらいやると、落ち着くところに落ち着く」と説明する。

同大学によると、全学生3245人(10月現在)のうち88%が市内に住んでいると見られる。大学周辺は近年、学生向けのアパートや飲食店の進出が目立ち、地域開発が進む。

一方で、学生の居住が大学周辺のアパートに集まったため、市中心部にあった学生の下宿屋の空洞化が著しい。

このため商店街の地盤沈下が進む市中心部と、大学周辺との格差が生じている。

市は09年度の予算で、同大学への運営費交付金として7億2600万円を盛り込んでいる。「市立」だった昨年度は6億5700万円を支出している。

費用対効果について、大学の非常勤理事の田中一利・市商工会長は「地域への経済効果は年間に30億〜40億円になるだろう。企業誘致と同じ。市民と密接な関係になっている」と話す。