『中国新聞』2009年10月24日付

産学官拠点構想が宙に浮く


山口県や山口大が進めていた産学官の連携拠点施設の構想が棚上げになっている。独立行政法人科学技術振興機構(JST)の公募に、新施設の建設費を含む総事業費23億5千万円の構想を提案したが、新政権が公募事業の予算枠の圧縮を決定。県などは構想の大幅修正を迫られている。

構想は「山口イノベーション創出推進拠点」(仮称)として、宇部新都市あすとぴあ(宇部市)に3階建て延べ約4千平方メートルの施設を建設。企業の技術者や大学の研究者が集い、環境や省エネ、素材の実践的な技術開発を進める。早くて2011年春の開設を想定していた。

JSTは「地域産学官共同研究拠点整備事業」として今夏に公募をかけ、47都道府県すべてが手を挙げた。事業費は全額国が交付し、今月中には採否が決まる予定だった。

しかし、民主党が軸の新政権は16日、本年度補正予算の見直しで同事業の予算695億円のうち6割強の432億円の執行停止を決定した。

突然の「待った」に関係者は困惑。50企業にニーズの聞き取りをした山口大産学連携課の重本隆之課長は「地域活性化策として期待していたが…」。県新産業振興課の橋口総司課長も「施設建設が無理となり、事業の形が大幅に変わる」と戸惑う。

国は既存施設の活用を想定し、執行停止額を除いた263億円を電子顕微鏡や先端の検査装置など設備費に回す方針。30地域程度が選ばれる見通しだが、今後の選定条件やスケジュールは文科省、JSTとも「現在、検討中」という。