『徳島新聞』2009年10月16日付

徳島大学の次期学長に選ばれた
香川征(かがわ・すすむ)さん


国立大学法人化から6年。少子化や国の予算削減などで大学間の競争が激しさを増す中、生き残りをかける徳島大学のかじ取り役を任されることになった。「地域の活性化をけん引する知の拠点であり続けられるよう、教職員一丸となって大学づくりに励む」。重責を感じながらも決意の言葉は力強い。

泌尿器科学が専門の医師で、1999年に徳島大医学部付属病院(2003年から徳島大学病院)の院長に就任。老朽化した病棟の建て替えを推進し、女性や糖尿病患者を対象にした特定外来を設けた。訪れる人の利便性を考え、他の大学病院に先駆けて院内にコンビニエンスストアやコーヒー店も。「まずは、しっかりとした情報収集。いいと思ったことはすぐ実行する決断力も必要」。病院経営で培ったノウハウを、大学全体の組織運営にも役立てるつもりだ。

今、痛感しているのは、企業が求める能力と大学が育てる人材のギャップ。「大学で学んだことが、社会で生きないと意味がない。学生が本当に学びたいものは何か、正確に把握し、教養課程を再構築する」と力を込める。学部の枠を超えた教育・研究の推進や国内外の大学教員、学生が交流する「連携大学院」の実現など、大学の“体力強化”へ温めている構想はいくつもある。

「フットワークの軽いアイデアマン」が周囲の評。自身は「せっかちなだけ」と苦笑する。大学時代は野球部に在籍。レギュラーにはなれなかったが、貴重な経験だったと振り返る。「いろいろな仲間ができるのが何より。学生は勉強だけでなく課外活動も楽しんでほしい」

時間を見つけては庭木の剪定(せんてい)と草むしりに励む。「無心になれて運動にもなる。きれいになった庭を眺めると気分がいい」。2人の娘は独立し、久代夫人(63)と2人暮らし。藍住町奥野。64歳。