『読売新聞』山形版2009年10月6日付

補正見直し有機EL「黄信号」 「人材流出」懸念の声
山大・城戸教授「世界に遅れ」


政府による国立大学法人の施設整備費補助金など2009年度補正予算の執行見直しを巡り、山形大学が計画している有機エレクトロニクス(電子工学)の研究拠点創設への影響の懸念が拡大している。執行停止の対象は公表されていないが、同大関係者は「赤に近い黄色信号の状況ではないか」と危機感を抱く。計画が白紙となれば、人材流出や地域産業育成の遅れにつながりかねないという。

計画では、十数億円規模で、研究に必要となる実験室やクリーンルーム(無じん室)などを備えた延べ床面積5600平方メートルの「世界でも類のない」という研究施設の年内着工を目指している。10年中の供用開始を条件に、「有機太陽電池」研究で世界的権威のあるオーストリアの研究者、「有機トランジスター」分野の国内トップの研究者の招請もほぼ内定しているという。

有機EL研究で第一人者の同大の城戸淳二教授は、「世界最高峰の研究者たちを集める象徴。白紙となれば欧州やアジアの競合国に流れてしまう」と懸念し、「今、事業継続をはたらきかけていかなければ、最も重要な今後5年間の研究に遅れを取ってしまう」と訴える。

同大工学部がある米沢市には、県が03年に「有機エレクトロニクス研究所」を設立し、昨年5月には三菱重工、ロームなどが共同で照明用パネルの合弁会社を設立。県は03〜09年度の研究開発に40億円、08〜10年度の事業化に対して8億円を支援。来年度以降の研究支援のあり方などを協議している段階だという。県商工労働観光部の佐藤和志部長は「地元では財源の問題だけで片づけられない重要な構想。国には研究が十分に継続できる方策を探ってほしい」と強調する。

同施設が執行停止の対象かは明らかではないが、文部科学省は2000億円超の執行停止の方針を示している。だが、政府全体で目標額に届かず、政府は各省庁にさらなる積み増しを求める方針という。