『読売新聞』山形版2009年10月4日付

有機EL拠点に影響懸念 関係者「白紙なら地元打撃」


政府による2009年度補正予算の見直しを巡り、文部科学省が2000億円超の執行停止の方針を示したことで、山形大学が計画する有機エレクトロニクス(電子工学)の研究拠点創設への影響が懸念されている。執行停止の対象は明らかにされていないが、関係者は「計画が白紙になれば、大学だけではなく地元産業界にも打撃」と困惑顔だ。

同大の計画によると、研究に必要なクリーンルーム(無じん室)などを備えた十数億円規模の「有機デバイス研究棟」を米沢市内の工学部敷地に新設。同大の城戸淳二教授をはじめ、世界で活躍する研究者を集めて複数の研究チームを作り、有機ELだけでなく、有機太陽電池や有機トランジスターなど新分野の研究にも活用する考え。

しかし、政権交代に伴い、鳩山首相が全閣僚に、国立大学法人の施設整備費などの執行停止を検討して2日までに報告するよう指示。各省庁は執行停止事業を報告したが、政府全体の目標額に届いておらず、政府は各省庁にさらなる積み増しを求める方針。

研究拠点創設が執行停止の対象になっているかは明らかではないが、研究者の1人は「首相は温室効果ガス25%削減を掲げている。環境保全に貢献する研究を止めるのは矛盾」と話し、有機EL関連会社の役員は「地元産業に成長してきたのに」と心配する。同大関係者は「研究拠点は地域振興や雇用創出につながる。地元国会議員を通じて計画通りの執行を求めたい」と話している。