『琉球新報』2009年10月4日付

国公立学費:4年で240万 県外は生活費も


高校まで年額十数万円から20万円前後だった子どもたちの学費は、大学では一気に倍以上に膨れ上がる。県外大学への進学では自宅外通学が基本となるため、学費とは別に、生活費などの仕送りも必要だ。費用はかさむ一方だが、日本学生支援機構などの公的機関や、大学が独自で運営する奨学金制度も活用できる。

◆4年間の学費

「3人分の授業料だけで出費は年200万円を超える。大学では教育費が掛かると聞いていたが、学校の納付書を見ると実感する」。長男と三女が県内の大学に、次男が高校に通う女性=50代、糸満市=はため息をつく。授業料に加え、教科書や専門図書の購入費、交通費なども家計を圧迫する。「学資保険や定期預金で、こつこつと貯金をしていてよかった」。

県内では、琉球大(国立)、県立看護大、芸大の3大学の場合、4年間に掛かる学費はトータルで240万円。私立大の場合、国立と比べて高額な入学料や授業料に加え、施設費などの諸経費も支払わなければならない。

一方、自宅外通学となることがほとんどの県外大学への進学では、学費以外に生活費や住居費などの仕送りをしなければならない。

日本学生支援機構は2006年同学生生活調査で、全国の国立、公立、私立大学に通う学生の学生生活費(年間の学費と生活費の合計)の平均額をそれぞれまとめた。それによると、自宅外通学者の学生生活費は、国立大は年間176万円、公立大は163万円だった。私立大は246万円で、国公立と比べ70〜80万円多く掛かることになる。

◆奨学金制度

ただ、経済事情や成績評価など、学生が一定以上の条件を満たしていれば、日本学生支援機構や県などの公的機関や、大学、大学後援会などが運営する奨学金を利用できる。

沖縄大学の「推薦入試特別奨学制度」は、成績優秀な推薦入学者の授業料を半額免除する制度。センター試験で高得点だった入学生の授業料を半額免除する「センター試験利用入試減免制度」もある。同2制度は、成績評価が一定基準を満たしていれば、4年次まで適用される。そのため、4年間のトータルで見れば160万円以上の減免となる。

同大学入試広報室の担当者は、これら2種類の奨学制度について「学生の支援だけではなく、卒業までの4年間、学内行事などでリーダー的役割を担う学生を取り込む目的もある」と説明した。

沖縄国際大学には、授業料相当額かその半額、4分の1のうちどれかの金額を給付する「一般奨学金」、授業料と施設設備資金相当額を給付する「特待奨学金」などがある。

名桜大学、沖縄キリスト教学院大学でも、学業奨励奨学金など、さまざまな奨学制度を設けている。

琉球大学は経済的事情と学業成績両方の基準を満たす学生向けに、前期・後期の授業料を全額、または半額免除する制度を実施。前期・後期で毎回、800〜千人の学生が免除を受けている。

日本学生支援機構の奨学金を見ると、第1種は自宅通学の場合月額5万4千円を、自宅外は6万4千円を無利子で貸与する。第2種は有利子。3万円〜12万円の額を選択して貸与する。(山城祐樹)

◆支援制度の活用も 本人交え、話し合い重要

国立大か私立大か、県内か県外か−。子どもたちが選択する進路によって、出費は大きく変わってくる。教育資金は子どもが小さく出費の少ないうちからコツコツと貯蓄しておくのが理想的だが、そう単純には進まないのが現実だ。子どもが大学に進学する時、どのような点を考慮する必要があるか。ファイナンシャルプランナーの高橋賢二郎さんに聞いた。

高橋さんは浦添市で高橋FP事務所を経営。保険や住宅ローンなどライフプランの見直しなどのほか、子どもの進学に伴う資金計画の相談も受けている。

高橋さんは「県外進学なら、学費以外に生活費の仕送りも必要になる。親がどこまで支援するか、まずは夫婦でしっかり話し合うことが必要」と話す。

高橋さんによると、県内では夫婦合わせて年収500万円以内、という家庭が一般的。「全部の費用の面倒を見るとマイナスになってしまう」。

奨学金などを利用するのが得策だが、県内の家庭ではまだ、各種支援制度について認知度が低いのが現状のようだ。

高橋さんは「支援制度を知らないため、家庭の収入が低いことから子ども本人が『進学は無理』と思いこみ、あきらめてしまうケースが多い」と指摘。「奨学金には無利息で借りられるものもある。知識のある人に相談するなどして、現在の収入からどのようにすれば進学できるかを前向きに考えてほしい」と訴えた。

その上で、進学とそれに伴う費用について子どもを交えて話し合う必要性も強調。「子どもの進学は家族のプラン。『おまえは何も心配しなくていい』とただ安心させるのではなく、進学後の本人の自覚を促すためにも一緒に考えてみては」と語った。