『山形新聞』2009年10月1日付

山形大、斎藤前知事の教授採用案を撤回 役員会、学内の反発重視


山形大が前知事の斎藤弘氏(51)を教授として迎え入れる構想が浮上し、同大が30日、役員会で協議した結果、学内の反対意見が根強いことを考慮し、教授採用の人事案を白紙撤回した。斎藤氏について大学側は当初、10月1日付で国際交流担当教授就任を予定していた。

複数の山形大役員らによると、斎藤氏は結城章夫学長直轄の大学連携推進室で、国際交流を担当する予定だったが、同大6学部の学部長と医学部付属病院長が連名で「学内が混乱し、各学部の運営に支障を来す」との趣旨で人事案再考を求める要望書を提出、斎藤氏の教授就任に反対の姿勢を鮮明にした。

個別契約任期付き教員として斎藤氏の受け入れを検討してきた役員会は、学内の強い反発を重視。10月1日に後期がスタートする学内の混乱を回避するため、斎藤氏を教授採用する人事案を撤回したとみられる。「連携に関する協定書」(2006年5月)を結ぶ県との関係にも配慮したもようだ。

山形新聞の取材に対し、結城学長は「人事のことでありコメントは差し控える」と述べた。斎藤氏の教授任用を再検討するかどうかについては「現段階で計画はない」としている。

同じく斎藤氏は「(教授就任で)山形県のために違った角度から貢献できると期待していたが、特にお話することはない」とコメントした。

福田康夫首相(当時)が08年1月、施政方針演説で打ち出した「留学生30万人計画」に基づき、同大は海外から受け入れる留学生を年間2000人(現在約170人)に増やすためのプロジェクトを予算要求中。斎藤氏は高い語学力を評価され、担当ポストが一時用意された。

斎藤氏は高校時代に米国留学の経験があり、東京外国語大を卒業後、米国ジョンズ・ホプキンス大高等国際問題研究大学院修了。日本銀行を退職し、05年2月から知事を1期務めた。今年1月の知事選で、新人の吉村美栄子氏に敗れた。