『毎日新聞』2009年10月2日付夕刊

日本学生支援機構:電話8割つながらず 奨学金問い合わせで


大学生向けの奨学金を巡り、貸与先住所のずさんな管理で約130億円の未回収金が生じている独立行政法人「日本学生支援機構」(旧日本育英会)で、返還猶予や住所変更を受け付ける相談電話へのダイヤル件数の約8割が、通話中のためつながらない状態であることが分かった。人員不足が原因。支援機構は逆にダイヤル数の8割がつながる態勢を目標に掲げ、1日から態勢を強化。民間委託で担当者数を倍にした。

相談電話は返還困難な奨学生への指導や住所変更の受け付けなどを行っている。支援機構の電話相談システムに記録された今年7月のダイヤル数は約19万4400件。しかし、実際につながったのは約3万5500件、約18%にとどまった。長時間待たされ、担当者とつながる前に切ってしまうケースが多いという。

横浜市に住む奨学生の母親(63)は9月、相談電話に10日間ほどかけ続けたが、つながらなかった。「1日3回かけたのに冗談じゃない」と憤る。私立大に通った長男(32)が奨学金211万円を15年で返す計画だが、別のアパートに住む長男夫婦は子供ができるなどすれば転居の可能性が高いため、支援機構に届ける住所地を母親の住所に変更しようとした。電話がつながらなかったことで、結局、簡易書留で住所を送った。母親は「つながらなくて『もういいや』と思う人がいっぱいいると思う」と話した。

支援機構の職員でつくる労働組合「奨学金の会」などによると、相談電話の混雑ぶりは独立行政法人となった5年前から悪化。独法化に伴う国の補助金削減を受けて職員を減らし、奨学金担当の職員は今年1月現在で155人で、旧育英会時代の半分程度になった。その一方、不況により貸与者が増え、相談件数は増加傾向にあるという。

支援機構は「今後の運用状況を見て、さらに改善したい」と話している。相談電話の番号は0570・03・7240。【苅田伸宏、松谷譲二】