『信濃毎日新聞』2009年9月24日付

大学と企業の共同研究 最多に 信大は255件、全国15番目


大学と企業が連携し先端技術や農産物などを開発する共同研究が、2008年度に1万7638件と、最高になったことが、文部科学省の調査で分かった。最近5年間でほぼ倍増した。信大は255件で、全国の大学で15番目に多かった。信大のように地方の大学と地元企業が組むケースも定着し始めており、厳しさを増す地域経済のてこ入れ策としても活用されつつある。

同省によると、大学や短大、高専で行われた共同研究は、03年度は9255件だったが、毎年右肩上がりで増加。08年度は計356校で実施。研究件数の1、2位は東大、京大が占めたが、上位30校には北海道や東北、広島など地方の大学も名を連ねた。

研究相手は企業が85%に当たる1万4974件を占め、次いで公益法人が1800件、自治体は365件だった。分野別では、生命科学やナノテクノロジー(超微細技術)などが多かった。

文科省は、法人化されて特許権の管理体制整備が進み、社会貢献を重視する大学に対して、大学の専門性を活用したいという企業の思惑が合致したと分析。政府の研究資金の提供が増えたことも急増の背景とみている。

信大研究推進部によると、研究相手は企業が228件で最も多く、うち県内企業が82件。次いで独立行政法人7件、地方公共団体6件だった。分野別では製造技術が最多で90件、医学や食品技術などの「ライフサイエンス分野」が70件だった。

ただ、信大の共同研究実績は05年度171件、06年度231件、07年度がピークの267件で、08年度は12件減った。同推進部は「経済危機の影響からか、県内企業との共同研究が減少した」とする。

一方、実用化される例も少なくない。信大繊維学部(上田市)は今年1月、大阪府の衣料関連企業と、ウイルスや、アレルギーを引き起こすタンパク質の侵入を防ぐマスクを開発し、販売を始めたと発表した。全国でも、玄米粉を使ったクロワッサンの開発(岩手大)や、長期入院の小児患者ら向けの遠隔通信システム(島根大)などがある。

研究相手に中小企業が占める割合は、まだ2割程度。文科省は「地方の大学が大企業と組もうとする傾向もある」とし、自治体が大学と地元企業を橋渡しするなど地域の連携強化が課題だ。