『朝日新聞』2009年9月14日付

家計負担、高等教育で突出 OECD調査


教育への日本の公的支出は、28カ国中27番目――。8日発表された経済協力開発機構(OECD)の09年版「図表でみる教育」は、日本の教育に対する公的支出の水準の低さと、家計負担の大きさを、あらためて浮き彫りにした。一方で、進学率の高さなどの教育成果を評価する項目もあった。

日本で06年に、国や地方自治体の予算から教育機関に出された公的支出の割合は、国内総生産(GDP)比3.3%で、トルコの2.7%に次いで低かった。00年以降の日本は、最下位か、下から2番目に定着してしまった感がある。

一方で、教育支出に占める私費負担の割合は33.3%で、OECD平均の15.3%を大幅に上回って最高水準だった。特に、家計負担の割合が21.8%と、韓国に次いで高く、他国を大きく上回った。その割合は、就学前(38.3%)と、大学などの高等教育(51.4%)が突出。高等教育において、日本は「授業料が高く、奨学金などの学生支援態勢が比較的整備されていない国々」のグループに分類された。

結果を聞いた塩谷文科相は「日本の教育費は家計に『おんぶにだっこ』してきた。教育の必要性を訴えてきたが、財政の問題が一番大きい。忸怩(じくじ)たる思いだ」と述べた。

報告書の中には、日本の教育への参加率や成果を評価する項目もあった。

07年の高校の卒業率は93%で、OECD各国平均の82%を大きく上回り、ドイツ、フィンランド、ギリシャに次ぐ4位だった。男子と女子の卒業率の差は2%で、各国平均の9%より小さいことも特徴になっている。大学・短大などへの進学率は76%で、平均の71%を上回った。4歳以下の児童の在学率も平均より高い。

15歳児を対象にした06年の「生徒の学習到達度調査」(PISA)で、経済・社会的背景に恵まれない生徒が「成績優秀者」に占める割合は34.9%。比較できるデータがある28カ国中、ポーランドに次いで高い水準だった。

また、日本の先生の授業時間は小、中、高校の各段階で平均時間より短いものの、勤務時間は1960時間(07年)とデータがある17カ国中で最も長かった。小学校の学級規模は1クラス28.2人と、平均(21.4人)よりも多く、この傾向をOECDの分析担当者は「日本の教育は、1クラス当たりの子どもの数が多いため、教育予算を抑えることができている」としている。

また、民主党が公約で、先生の数を増やして、少人数学級を進める方針を打ち出していることについて、分析担当者は「方向性としては正しい」と指摘している。

〈キーワード〉「図表でみる教育」 OECDが毎年発表する加盟国の教育状況の調査報告書。学習の効果や教育への財政的・人的投資、学習環境など国際比較ができる指標を開発して分析している。「生徒の学習到達度調査(PISA)」も指標の一つ。09年版(英語)は、OECDのホームページ(http://www.oecd.org/edu/eag2009)から無料でダウンロードできる。日本語版は、明石書店から10月上旬に発売される。税込み7980円。