『毎日新聞』2009年9月9日付

選択のあとに:09政権交代 減額続く交付金 「教育の質、保てない」国立大は悲鳴


◇教員削減など

経済協力開発機構(OECD)が8日に公表した教育調査で、他国と比較して大きく見劣りするのが大学など高等教育費の貧弱さだ。ただでさえ乏しい教育費が小泉政権から続く歳出抑制策で減らされ続けており、各大学からは「教育の質を保てない」との悲鳴が漏れる。OECD平均並みの教育予算を目指す民主党の具体策が問われる。

「大学教員の数が付属校よりも少なくなるなんて」。東京学芸大の馬淵貞利副学長は嘆く。04年度以降、国立大の主要財源である国からの運営費交付金は毎年度1%ずつ減額され、86ある国立大への全交付額はこの5年間で720億円減った。

学芸大の削減額は毎年度約7000万円。付属の小中高校など計13校はクラス編成があり教員を減らすのが困難で、代わりに大学教員を削減した結果、04年度の約380人から350人以下に減り、付属校の教員とほぼ同数まで落ち込んだ。

交付金削減で「施設補修工事を先送りした」(福岡教育大)、「教員の補充ができずになくした講義もある」(上越教育大)と教育の質の維持が困難との声が上がる。国立大学協会は「このままなら一部国立大は破綻(はたん)し基礎研究の芽はつぶれる」と訴える。

子ども手当支給や高校無償化が目玉になっている民主党マニフェストでも、高等教育は奨学金創設がうたわれているだけ。ある国立大学関係者は「最高学府の質が維持されなければ国際競争に勝てない。新政権にすぐにでも陳情し現状を訴える」と語った。【井崎憲、井上俊樹】