『朝日新聞』2009年9月8日付

日本の論文、「質」9位に転落


日本の科学系論文の質の向上が最近10年間頭打ちで、質を示す指標は4位から9位まで落ちたことが学術情報会社「エルゼビア・ジャパン」の調査で分かった。論文の数も2位から5位に転落した。

調査は、世界の主要学術誌のほとんど(1万8千種類)を網羅しているオランダの親会社のデータベースを利用して行われた。今年7月現在で、引用された回数などから論文の質の高さを示す指標を算出して08年と98年を比較した。

その結果、日本の指標は0.407から0.444に上がったものの、上昇の度合いは上位10カ国中最低で、フランス、カナダ、イタリア、オーストラリア、スペインの5カ国に抜かれた。1位の米国、2位の英国、3位のドイツは変わらなかった。中国は10位のままだが、指標は0.182から0.400に急上昇し、日本に迫っている。

論文数をみると、日本が世界に占める割合は98年の7%から08年は5%に低下。しかも07年からは数そのものが減少に転じている。一方、中国は10年間で6.4倍に急増して、米国に次ぐ「論文大国」に躍進した。

エルゼビア・ジャパンの三木律子代表取締役は「論文の質の向上には数の増加が必要だが、日本では増えていない。国立大学の法人化で研究者が雑務に追われ、研究時間が減ったことが影響しているのではないか」と話している。