『読売新聞』2009年9月5日付

金融が大学との提携加速、新技術や特許企業に仲介
関西で独自ファンド相次ぐ


関西の金融機関が地元大学との連携を強めている。大学の持つ優れた新技術や特許などを中小企業に紹介し、新規事業の立ち上げなどにつなげるのが狙いだ。大学側も、少子化による競争激化で経営が厳しく、技術が実用化されれば研究資金獲得などが期待できるため、双方の思惑が合致した格好だ。

(杉目真吾)

■差別化に懸命

中小企業の多い関西では、不景気で企業の資金需要が細る一方、「優良企業を囲い込もうと、大手も含め、低利での融資競争が激しい」(地銀幹部)のが現状だ。国の制度を利用した低利融資も広がっており、金融機関は、従来の顧客をつなぎ留め、新たな融資先を開拓するために、投資ファンドの設立など他行との差別化に知恵を絞っている。

池田銀行は8月、神戸大との間で、取引先企業との共同研究や技術マッチングを推進する産学連携協定を結び、関連ベンチャー(新興企業)に投資や融資を行う専用のファンド(総額1億円)を創設した。「地域経済を活性化させれば、自行の収益にもつながる」(同行)との考えだ。

京都銀行もグループ会社と2008年、同志社大発ベンチャー向けファンド(総額2億円)を設立、投資を始めている。

■出会いの場演出

大学と企業との出会いの場を提供する取り組みも活発だ。大阪市信用金庫は11月、大阪市立大と共同でセミナーを開き、新規事業立ち上げを支援する。京都信用金庫が04年から開いている交流フォーラムには、すでに1000社を超える企業が参加。大学も、理工系だけでなく、文化、芸術系に広がり、「日用品や繊維関係などでも連携の成果が出始めている」という。

一方で、摂津水都信用金庫(大阪府茨木市)は昨年7月、大阪大などが保有する知的財産を、中小企業で実用化につなげるイベントを開いたが、具体的な成果に結びつかなかった。「企業のニーズと大学の持つ技術の間に想定以上の距離があった」(同金庫)ためで、今年度の開催は見送られた。

マッチングを成功させるには、「仲介役となる専門知識を持った人材の育成が必要」(私立大)だ。

りそな銀行は7月から、立命館大に営業畑の行員1人を出向させ、産学連携に携わる専門家づくりに乗り出した。企業と大学双方のニーズ収集など、実践的なノウハウの取得に取り組ませ、今後の他大学との連携ビジネスにもいかす考えだ。