『朝日新聞』2009年7月15日付

教員免許更新、大学講習ガラガラ 228講座中止に


今年度から始まった教員免許更新制で実施される教員向けの講習について、15日現在で39大学が計228の講習の開催を中止したことが文部科学省の調査でわかった。いずれも申し込みがゼロだったり、極端に少なかったりして、大学側が「経営効率が悪い」などと判断したという。受講できなくなった教員は401人おり、代替の講習を探さねばならなくなっている。

教員免許の更新は10年に1度義務づけられ、今後、全国で毎年約10万人の教員が対象になる予定だ。文科省は制度開始に当たって全国の大学にできるだけ多くの講習を開くよう協力を呼びかけてきた。しかし、各地の受講予定者数に対し、大学側がどれぐらいの講習の数を設けるのが適正か考えず、任せきりで十分に調整しなかったため、こうした状況を招いたとみられる。

文科省によると、教員免許更新の講習を開く大学は510。このうち、通信制を除くと、教員の新たな知識などを学ぶ「必修」科目の開催は延べ315大学・901講習(定員約11万2400人)、生徒指導などに役立てるための「選択」科目が496大学・8540講習(定員約13万6600人)に及ぶ。

しかし、全体的に「供給過剰」の状態で、ほぼ日程が固まった5月末の段階で、定員に対する申込者の割合は「必修」が約6割、「選択」が約4割と大幅に定員割れを起こしていた。

大半の講習は大学、教員ともに比較的余裕がある夏休み期間に設定されており、これからが本番だ。国立の広島大学(広島県東広島市)の場合、8月中に「選択」科目を69講習開く予定だったが、開講の条件を「希望者8人以上」と設定しており、31講習がゼロも含めてこれを下回ったため、中止にしたという。広島県内には免許更新の対象者が年間2千人程度いるとみられるが、受講者側は自宅からの通学の便利さを優先して大学を選ぶなどの傾向があるという。

ほかにも、群馬大、埼玉大、富山大、長崎大など国立を中心に10講習以上中止した大学が出ている。取り上げるテーマや内容、大学の設備の充実度などで人気、不人気の差が開くケースも目立つという。文科省の担当者は「今後は地域での量的な調整も含め、教育委員会と大学の情報交換をより進めるようお願いしたい」と話した。(編集委員・山上浩二郎)

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〈教員免許更新制〉 幼稚園から高校までの現役の教員が対象。今年4月以降に教員免許を取得した人について10年の有効期限を設定。それ以前に免許を得た人も35歳、45歳、55歳を区切りとし、それぞれ期限までの2年間に大学などで講習を受けることを義務づけた。修了しないと教壇に立てなくなるが、文科省は「普通に受講して最低限の理解が得られたと判断されれば更新される」と説明している。制度をめぐっては「多忙な教員の負担をさらに重くする」といった批判もある。