『読売新聞』千葉版2009年7月8日付

千葉大園芸学部 移転を正式断念
国立大 財政難が影


千葉大は7日の臨時役員会で、西千葉キャンパス(千葉市稲毛区)に隣接する東大の敷地を購入しないことを決めた。これにより、園芸学部(松戸市)の千葉市への移転を断念し、一時売却を検討した柏市の環境健康フィールド科学センターの存続も正式に決まった。独立行政法人化で国立大の財政状況が厳しくなる中、最終決定はキャンパス移転の難しさを浮き彫りにした。     (北條豊)

「結論的には、資金が足りないということです」。役員会終了後、記者会見した斎藤康学長は、そう振り返った。園芸学部(約15ヘクタール)と科学センター(約17ヘクタール)の売却を目指したが、反対する松戸、柏両市に配慮して緑地を残すなどの計画変更によって20億円以上の赤字が見込まれ、移転断念に追い込まれた。

当初の移転計画では、主なキャンパスが千葉市内に集約され、全学連携した研究や教育の推進と経費削減が期待できるとしていた。2004年に国立大学が独立行政法人化されて以来、補助金が原則毎年1%ずつ減額され、効率化が急務であることも背景にあった。

60年の歴史の中で千葉大は移転について何度か検討してきたが、東大が07年、西千葉キャンパスに隣接する生産技術研究所千葉実験所用地(約9ヘクタール)を売却する方針を決めたことから、「最後のチャンス」と本格的な検討に入った。

その一方、予算不足のため、移転経費を捻出(ねんしゅつ)するには、既存施設の土地売却益に頼るしかないのが現状。

文部科学省によると、国立大では東大、東北大、九州大などでキャンパス移転・統合計画が進められているが、いずれも5年以上前からのもので、千葉大は法人化後では初の大規模なキャンパス移転計画になるはずだった。

このうち、東北大は基本的に同じ仙台市青葉区内に移転。九大も騒音問題を抱える空港近くのメーンキャンパスを同じ福岡市の郊外などに移転するなど、いずれも順調という。15万人以上の反対署名が集まった松戸市のように、「強い反対がある中での大学移転・統合はあまり例がない」(文科省)という。

斎藤学長は移転計画が復活する可能性について「将来のことは分からない」としたが、今後、景気が回復しても、資金問題と地元の同意を両立させるのは容易ではない。