『神戸新聞』2009年7月3日付

神戸大が関経連加盟 教育現場に戸惑いも 


神戸大が、京都大、大阪大とともに国立大学法人としては初めて、企業を主な会員とする関西経済連合会(関経連)に加盟した。神戸大は「教育、研究が最優先であることは変わらない」とするが、国立大学の独立行政法人化に伴って「経営」の視点が求められる状況などを踏まえ、入会を決めた。関経連は「産学連携を進めやすくなる」と歓迎。一方、教員らの間には、経済的な発想とは相いれない側面のある教育・研究機関が経済団体に入ることへの違和感もあるようだ。(黒川裕生)

産学連携の調整などを担当する神戸大連携創造本部によると、今年1月、関経連側が加盟を打診。同大は2003年に同本部を開設し、地元経済界との関係強化を図ってきた経緯があるため、「断る理由がない」と入会を決めたという。

共同シンポジウムの開催などで連携する京都、大阪大と歩調を合わせ、5月に加盟。しかし当面、具体的な事業の予定はない。

国立大は04年4月に法人化され、以降、教員の人件費や教育・研究費に充てられる「国立大学法人運営費交付金」は毎年1%ずつ減らされている。同本部によると、神戸大では削減額が年間約2億円に上り、実験設備の更新費や図書購入費などの抑制を迫られているという。

このため、企業との共同研究で得られる資金や特許料収入など、学費以外の「外部資金」獲得を目指し、産学連携に力を入れる傾向は拡大。同本部は「関経連とのパイプができることで、インターンシップ(就業体験)や就職などの人材交流はもちろん、大学での研究成果を事業化したり、企業の委託研究を受けたりしやすくなるはず。方向性を明確に定め、一歩を踏み出した意義は大きい」と強調する。

関経連によると、06年ごろから学校法人の加入が増加。現在は、関西学院大や関西大など11法人が加盟している。少子化に伴い、経営基盤の安定化を図ることが目的の一つとみられる。

こうした状況に対し、現場には「教育・研究機関である大学で経営の論理が優先されるようになれば、本来の目的が果たせない」と危ぶむ声も。神戸大の文系学部教授は「経済界からの支援を期待して入会を決めたのだろう。企業の利益につながる研究をする理系の学部が優遇され、学生の間に不平等が生じなければいいが」と不安視する。

この教授はまた、3回生のときから就職活動が本格化するため、多くの講義が成り立たなくなっていると指摘。「今回の加盟が、企業側に再考を促すきっかけになれば。学内でも今後、加入の是非などをめぐり議論を深める必要がある」と話している。