http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/report/090415.html

意見書等 Subject:2009-04-15
中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会 「法科大学院教育の質の向上のための改善方策について(報告)案」の骨子に対する意見書



意見書全文(PDF形式・15kB)

2009年4月15日
日本弁護士連合会

本意見書について

文部科学省は、中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会「法科大学院教育の質の向上のための改善方策について(報告)案」の骨子に関する意見募集を実施し、日弁連は2009年4月15日に意見書をとりまとめ、同日文部科学大臣に提出しました。

意見書では、改善の方向性については、単に理論教育の量的拡大で対応するのではなく、実務教育との連携のもとに教育の質を高める実質的な取り組みがなされるべきであること、法学未修者対応の名の下に1年次に過重な負担を課すような改変は3年制を基本とする制度設計に反すること、入学定員の削減や法科大学院の統合等についてはもっぱら教育の質を確保する目的から行われるべきであり、地域的適正配置に十分配慮するとともに司法試験の合格実績を過度に考慮すべきではないこと、などを表明しました。
(※本文はPDFファイルをご覧下さい)

新首都圏ネット事務局による意見書抜粋引用

意見の趣旨
本報告骨子の「改善の方向性」の中には,法科大学院の基本理念に反する懸念があるものが含まれており,その実施にあたってはさらなる検討と十分な配慮が必要である。

なお,このような制度の基本理念にも関連する重要な問題についての意見募集が週末を含むわずか5日間という短期間でなされたことは適切さを欠くと言わざるをえない。最終報告は拙速にまとめることを避け,より開かれた議論の中で慎重な検討を続けるべきである。

意見の理由
とりわけ問題が大きいと思われるものについて,理由を述べる。

1 「第2 修了者の質の保証」<改善の方向性>について
(1) Aについて
まず,改善の方向性が「法律基本科目の量的・質的充実」とされ,それのみが指摘されている点は誤解を生むおそれがある。今後の改変が,質よりも量の面に偏することとなったり,臨床科目を含む実務基礎科目の拡充の課題とのバランスを失することとなってしまわないよう留意する必要がある。

また,法律基本科目の質的充実が望ましいことは言うまでもないが,それは,教材選択や予習指示の方法,授業方法等の工夫,法律実務基礎科目との連携等による教育内容や教育方法の改善等,さまざまな取り組みを通じて実現されるべきであり,授業時間や学習範囲の量的拡大によってのみ解決されるべき性質のものではない。

また,仮に法律基本科目の単位数の多少の増加を認める場合であっても,その増加分を法学未修者1年次のみに配当することは適切でない。そのような改変は,法学既修者の学修を基準として,その出発点に法学未修者を1年間で到達させるという基本思想に基づくものにほかならず,法学未修者を前提とし,標準修業年限を3年とする法科大学院の基本的な制度設計に反するものである。さらに,学生の自学自修時間を確保するためのいわゆるキャップ制を骨抜きにするものであって,この点でも,法科大学院の基本的な制度設計に反する。

(2) Bについて
法科大学院教育が,法曹養成の中核である以上,そのプロセス全般を通じて成績・進級判定が厳格に行われるべきことは当然である。

しかし,前述のように,法科大学院の制度設計はあくまで法学未修者を原則型とし,3年間をかけて充実した教育を行うことを前提としているのであるから,法学未修者の2 年次への進級のみを特に厳しくすることが,法学未修者の1年次をあたかも法学既修者へのキャッチアップのための期間であるかのごとく捉える考え方に基づくものとすれば,それは誤りである。

2 「第3 教育体制の充実」<改善の方向性>について
(1) Aについて
「入学定員の見直しや教育課程の共同実施・統合等の促進」は,全国適正配置の観点に十分配慮するとともに,法科大学院の理念に沿ってなされなければならない。もっぱら教育の質を高める目的から教育課程の共同実施等を促進することは相当であるが,それらは,地理的な条件についての慎重かつ適切な検討のうえ実施すべきである。

また,入学定員の見直しについては,@大都市の大規模校において100名規模の大幅な定員削減をするなど,大規模法科大学院において積極的に検討すること,A法科大学院の全国適正配置の観点に十分配慮すること,B司法試験の合格実績を指標として過度に考慮すべきではなく,あくまでも教育の質の確保という見地から判断されることが必要である。

以上