『産経新聞』2009年6月26日付

関西にナノテクの核を 阪大、共同研究拠点に認定


ナノテクノロジー(超微細加工技術、ナノテク)に強みを持つ大阪大学の産業科学研究所(産研)が25日、文部科学省からナノ分野の「物質・デバイス領域」のネットワーク型共同研究拠点として認定を受けた。今後、他の4大学の研究機関と連携してナノテクを利用した、電子ペーパーや超高感度バイオセンサーなどの実用化を推進。関西にナノテク関連産業を集積させる核となることが期待されている。

産研とともに研究拠点に認定されたのは北海道大学電子研、東北大学多元研、東京工業大学資源研、九州大学先導研。参加する研究者数は約2260人で、ナノテク分野では世界有数の研究ネットワークになる。

ナノテクは、ナノメートル(10億分の1メートル)のスケールで物質を加工するものづくりの技術。分子、原子レベルで操作することで、優れた機能を持った物質を作ることができるため、IT(情報技術)、バイオ、環境など幅広い次世代型産業に応用できる。

今後、産研を中心に、研究テーマに合わせて効率的に各研究機関の設備を利用したり、大学横断型の研究チームを編成したりするなどして研究を加速。電子ペーパーといった新しい情報機器をはじめ、疾病の原因を詳細に特定できる超高感度バイオセンサー、特定の患部に薬剤を送り込むドラッグ・デリバリー・システムなどの実用化を図る。

また、産研は、産業科学ナノテクノロジーセンターなど最先端の研究設備を保有する一方、来年3月の完成を目指して、企業との共同研究を促進するための研究棟(地上5階・一部地下1階建て延べ床面積5千平方メートル)の建設も進めている。完成後、3、4階の24室を電子部品、高機能材料、医療、環境などナノテク関連の研究に取り組む企業に貸し出す。

今後、研究棟を中心に大学間、企業間の連携を進め、国際的な研究ネットワークの形成にも取り組む。山口明人所長は「ナノテク研究の中心的な役割を担っていけるのは大きな名誉。ナノテク産業の集積を通じて関西経済の活性化にも貢献していきたい」と話す。