『河北新報』2009年6月26日付

秋田大、横手に「分校」来月開設 市と連携組織


秋田大(吉村昇学長)は7月、横手市の地域活性化に貢献するため、市との連携組織「横手分校」を市内に開設する。市全体を活動拠点に、公開講座や産学官連携による研究成果を市民に還元するのが狙い。大学と自治体が地域活性化で全面協力する連携組織は珍しく、秋田大は活動地域の拡大や他大学との協力も視野に取り組みを進める。

事務局は市中心部の公共施設に設置する予定。職員を配置し、市民や企業からの相談、要望に応じる体制をつくる。市内の公共施設や学校、農地、企業などさまざまな場所を活用する。

組織開設後は、中学生向けに大学教員が指導する科学教室を開催するほか、高校生が大学の授業を体験できる講座を開講したり、県内の他大学と入試説明会を実施したりする。歴史や健康をテーマにした市民講座も開く。

地域経済の活性化に力を入れ、(1)生産過程で間引きしたスイカの活用法の研究(2)100近い蔵がある増田地区のまちづくり(3)大根をいぶって作る「いぶりがっこ」の大学ブランド商品化―などに教員や学生がかかわる。

秋田大と横手市は2月、人材育成や産業振興を図る包括協定を結んだ。今回の試みは協定内容を具体化した第1弾となる。横手市は「市内に大学はなく、研究成果に触れる機会が少なかった。活動を市内の活性化につなげたい」と期待する。

秋田県内は秋田市に大学が集中し、県南部や北部の高校生が宮城県や岩手県、首都圏の大学に進むケースが少なくない。

秋田大はこうした現状を踏まえ、連携の対象を横手市から県南部全体に広げ、県北部にも同様の組織をつくる方針。高校生が受講した講座分を、入学後に単位互換できるシステムの導入なども検討する。

秋田大は「大学が地域課題を解決するには、積極的に外に出ていく姿勢が必要だ。市民の関心も高く、地域とともに活気のある取り組みにしたい」と強調する。