『朝日新聞』2009年6月25日付

千葉大キャンパス移転構想に地元や同窓会から反発


松戸市の千葉大園芸学部を千葉市の西千葉キャンパスへ移転する構想を進める同大本部が、費用工面のため柏市の柏の葉キャンパス(環境健康フィールド科学センター)の売却を検討していることがわかった。面積は17ヘクタールで温室、研究棟などがある。柏市は「容認できない」と強く反発、19日、大学側へ文書で申し入れた。

松戸市だけに限られていた反対の動きが一気に広がった。同窓会「戸定会」代表も同日、塩谷文部科学相に反対声明文を渡した。

同学部の移転構想は、西千葉キャンパスに隣接した東大生産技術研究所の敷地約9ヘクタールの購入を東大から持ちかけられたことから始まった。大学本部は、構想実現の費用を生み出すための検討を重ねてきた。しかし、今年3月末の東大への回答期限までに結論が出ず、「夏まで」と延ばしてきた。

同学部関係者によると、斎藤康学長が5月末の同学部教授会に示した案は、移転費用を土地購入費と施設整備費など総額200億円強と見積もった。費用を出すために、緑地約5ヘクタールをのぞいた園芸学部敷地、千葉市の学生寮のほか、柏の葉キャンパスの売却を提案したという。新たに農場の建設が必要となるが、これは千葉市の明治大誉田農場の一部購入であてるとした。

同学部教授によると、本部は6月末にも計画を固める意向だったという。だが、学部内の反対は根強く、まとまらなかった。この案でもまだ移転費用が数億円は足りないうえ、地価の算定根拠が不十分という意見や、数年先の売却時点での地価予測が不透明などの疑問が出された。

柏の葉キャンパスのある柏市は19日、担当者が大学本部を訪れて反対を申し入れた。同市は北部地域で県、東大、千葉大と連携して「国際キャンパスタウン構想」を進めていて、千葉大の離脱は構想にも大きな影響を与える。

卒業生2万人がつくる「戸定会」も、総会で反対声明を出し、文科相に申し入れをした。声明は、(1)松戸キャンパスは近代園芸資産そのもの(2)中央官庁や研究機関が集まる茨城県つくば市にも近い(3)環境科学センターの売却は大学の大きな損失、などとしている。

同大本部は今回の売却案について、「あくまでも選択肢の一つ」と話している。(園田二郎)