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2009/06/11 更新

国立大学法人運営費交付金の1%削減の撤廃について(要望)


国立大学法人運営費交付金の1%削減の撤廃について(要望)


 国立大学法人の財政的基盤である運営費交付金は,骨太方針2006に基づき,毎年対前年比△1%の削減が行われ,平成16年度以降5年間で国立大学の運営費交付金は720億円が削減され,本学においては平成16年度に比較し,平成21年度の運営費交付金は約13億円もの減額となっております。
 本学は,これまで多くの優秀な人材の育成や研究成果の還元により,地域の様々な機能を支えて参りました。特に,平成20,21年度においては,福井県の小中高生の高い学力を育む教師力を高める教職大学院の設置,医師確保に係る福井県の要請に応えた医学部の定員増,地域特性を踏まえた原子力分野の人材育成に向けた国際原子力工学研究所の設置等,国の財政支援を殆ど得られない厳しい状況の中,本来ならば支給すべき教職員の手当を凍結し捻出した予算も充てて,地域の発展に貢献できるよう最大限の努力を行って参りました。
 しかしながら,継続される運営費交付金の削減に対し,大学単独でのやりくりや節約では限界に達し,昨今では老朽設備等の更新の目途が立たない,必要な教員の後任補充ができないこと等により附属病院を含め大学の疲弊の度合いが増し,本学のような地方国立大学の役割である,地域の教育・研究・医療の拠点としての機能が弱体化し,地域の発展を阻害しかねない状況が生じつつあります。
 一方,財務省では,各大学の毎年度の剰余金を未使用のまま残った「埋蔵金」と称し,運営費交付金を抑制する方針との報道がなされております。剰余金は,大半が附属病院の借入金返済に充てられた部分であり,残りは各大学が教員補充の先送り,わずかな教育研究費の積立て,研究活動を犠牲にして病院の増収を図ることにより得られた老朽医療設備の更新のための積立てなど,つましい努力により,交付金では賄えない支出のために繰り越しているもので,このような財務省の見解は現場の実情を知らない霞ヶ関の議論であると言わざるをえません。
 日本の高等教育への公財政支出は,OECD加盟国中最下位であり,高等教育費の伸び率は,OECD諸国中,日本が唯一のマイナス(△2.6%)とのことであります。本学調査でも,大学の研究資金は,米国のジョンズホプキンス大学の1,635億円に対し,東京大学が283億円,本学はその200分の1にも満たない7億円程度の状況であります。中国,インド,ロシアなどの経済が躍進し,世界大競争時代となる21世紀において,資源の乏しい日本が生き残るには,技術発展を生み出す「人」への投資が不可欠です。このような中,知識創造の源である高等教育機関への投資をひとり日本のみが減らし続ければ,世界大競争時代の中で日本は着実に落伍していきます。
 さらに,元々財政基盤が脆弱であった地方国立大学の運営費交付金を減額し続けることは,地域のイノベーション推進や地域の経済発展の芽をつみ,大都市と地方の格差を一層助長するものであります。
 よって,本学は,地域における国立大学の役割を責任を持って果たすために,運営費交付金の継続的削減の撤廃と国立大学への財政支援の拡充を強く求め,本学がこれまで以上に地域社会に貢献できるよう関係各位のご支援をお願いするものであります。

平成21年6月11日
国立大学法人福井大学長   
福 田  優