『毎日新聞』2009年6月12日付

大学運営費:「国立大に余剰金」財政審指摘は心外…文科相


政府の財政制度等審議会が「国立大学で多額の剰余金が生じ、約3000億円の積立金がある」と指摘したことについて、塩谷立文部科学相は12日の閣議後会見で「半分は会計処理上の形式的な利益で、現金が残るわけではない。大学運営は大変厳しく、剰余金ととらえられるのは心外だ」と批判した。

04年度の国立大学法人化以降、研究成果などに応じ配分する競争的資金が重視され、大学規模などに応じて配分される運営費交付金は削減が進んでいる。大学からは「このままでは経営破綻(はたん)する」などの声も上がっているが、財務省は3000億円を活用可能な「埋蔵金」と位置付けさらに削減を進める意向。「高等教育に予算を投じ、家計負担の割合を下げることが経済活性化につながる」と主張する文科省との対立が激化しそうだ。

財政審は3日にまとめた「10年度予算編成の基本的考え方」で「国立大が資金不足に陥っているとは言い難い」と指摘。しかし塩谷文科相は「1555億円は財政融資資金の償還期間と整備施設の減価償却期間の差などで生じる形式的利益で、現金が残るわけではない」と反論。また年度をまたぐプロジェクトの費用で、目的外に使えない積立金が計1446億円あるとした。

政府の「骨太の方針06」は毎年度1%ずつの交付金削減方針を掲げる。国立大学協会は10日「研究の芽をつぶす」などとし、削減方針撤廃を求める書面を財政審などに提出した。【加藤隆寛】