『日本経済新聞』九州経済面2009年6月18日付

産学連携、4割は目標未達成 開発技術の目標に温度差も


産学連携の約4割は失敗――。九州経済産業局は17日、生産や環境、エネルギーなどの技術開発で産学連携に参加した企業を対象としたアンケート調査の結果をまとめた。目標達成件数を尋ねたところ55%あったが、未達成も39.3%に上った。目標設定やマーケティング方法などの不備が要因だという。

調査は2008年7月に実施。九州の企業のほか、九州の大学と連携した関東や関西などの企業の計210社、338件の事例を集計した。研究分野は製造技術が31.7%と最も多く、ライフサイエンス(生命科学)21.3%、環境14.8%なども目立った。

産学連携の失敗につながった要因(複数回答)を尋ねたところ、最多は「目標設定が不十分」で10.9%。技術レベルなどの目標が企業と大学で異なり、双方が満足する結果にたどり着かなかったケースだ。

2番目は「マーケティングでのキーパーソンの不在・指導力不足」で7.7%。市場動向に詳しい人材が存在せず、せっかく研究した技術や製品が事業化につながらなかったとみられる。

一方、成功した要因(同)は「大学、企業との推進体制構築・緊密なコミュニケーション」が36.1%と最も多かった。「組織・体制面でのキーパーソンの存在」32.5%、「大学関係者の熱意の強さ」29.6%が続いた。

九州経産局は、産学連携推進のカギとして「技術そのものより、コミュニケーションや熱意、進ちょく管理といった人的要因のほうが重要」と指摘している。

産学連携の目的は「新規産業の創出」が51.8%と過半を占めた。中小企業と大企業に分けると、大企業は37.5%なのに対し、中小企業は56.7%にのぼる。中小企業が新事業への参入に向け、大学との連携に大きな期待を寄せている。