『読売新聞』2009年6月14日付

生き残りへ、公立法人化模索…鳥取環境大学長・古沢 巌さん


1年内に方向性/学科再編に一定の効果

鳥取環境大(鳥取市)が2001年に開学して8年。今年度の入学者は152人と定員(276人)の55%にとどまり、6年連続の定員割れとなった。経営の立て直しに向け、看護師不足を背景にした「看護学科設置」や「他大学との統合」、さらに「県立化」も取りざたされている。今春に再任され、大学存続に向けた改革に挑む古沢学長に課題を聞いた。

――入学者数をどう見ていますか

開学以来、毎年40人ずつ減っていたのが、今春は初めて前年度の141人を上回りました。学科改編や奨学金制度の充実がそれなりに効果を上げており、一定の評価はできるのでは。V字回復とは言えませんが、大学の新しい姿を知ってもらうには、もう少し時間がかかるでしょう。新設した「環境マネジメント学科」のPRに努めたい。

――定員割れで国からの補助金の確保が懸念されています

全体の学生数が定員の50%を切らないとゼロにはなりません。ただ、現状でもかなりカットされ、1億4000万〜1億5000万円と少ない。経営を立て直すには、やはり学生数を増やすことが不可欠です。

――様々な改革案が浮上しているようですが、現段階での実現可能性は

看護学科設置は、まず無理でしょう。県や市から十分な資金援助が得られるなら別ですが、教員の人件費や施設整備費を考えると、1学年80人の学生を集めても、毎年6000万円の赤字になるとの試算があります。そもそも学生が集まらないので看護学科を作りましょう、という発想ではダメです。

――他大との統合は

それも厳しい。有名私立大に対し、メリットが提示できません。例えば近畿大(大阪府)は、広島県や福岡県に分校のような形で単独学部のキャンパスを設けていますが、周辺人口が多く、学生が集まる見込みがあるからです。

――優れた環境学が売り物のはずですが

有名私立大の多くが、環境に関連する学科を既に持っています。うちの大学の教育が、群を抜いて優れているとは正直、言い切れません。

一方で、今の経営形態のまま生き残るには、定員を250人くらいに減らし、環境分野により特化した教育内容に変えて「鳥取でしか学べないことがある」と評価されるところまで持っていく改革が必要です。

――そうなると「県立化」の可能性が高いのでしょうか

「県立化」という表現は正確ではありません。もともと設置主体が県と市なので、公立大学法人を目指すことになりますが、行政側が判断することで、大学側からお願いする訳にはいきません。ただ、公立法人化すれば受験生を集めやすくなるのは確かです。とくに地元の県立高の場合、国公立大か有名私立大を目指す傾向が強いですから。

――結論はいつ頃出るのでしょう

現在、県や市の幹部、高校の先生などを交えた改革検討委員会で方向性を協議しています。私立大のまま生き残るか公立法人化するかなど、1年以内に方向性を出すつもりです。

(聞き手・高山千香)

公立大学法人

公共サービスの実施部門が独立した法人格を持ち、運営の効率化を図る地方独立行政法人の一つ。2004年に始まり、公立大からの移行が相次いでいる。鳥取環境大と同じ「公設民営」でスタートし、定員割れに悩まされていた高知工科大(高知県香美市)も今年4月に移行。国の交付税措置が受けられ、同大学では学生の学費負担が半減、定員割れが解消された。