『中日新聞』2009年6月11日付

岐大にiPS研究施設 京大と連携


人体のあらゆる細胞に変化できる胚(はい)性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)の基礎研究などを担う施設が、岐阜大(岐阜市)に完成した。iPS細胞開発に初めて成功した山中伸弥教授らが所属する京都大物質−細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)の国内唯一のサテライト機関と位置づけられ、がん化の仕組みを解明するなど安全性の高いiPS細胞づくりを目指す。

施設の運用は、岐大の主任研究者である木曽真教授(62)のチームが中心となって行う。木曽教授は、糖が鎖状につながって細胞膜に結合している「糖鎖」の研究で世界的な先駆者。糖鎖には多くの種類があり、動物の種や血液型の違いなどに強いかかわりがある。iPS細胞にも特異な糖鎖が結合しており、構造を解明し、がん化に関連する糖鎖がないかなどを調べる。

研究施設は、連合農学研究科棟の4階に設置。安全な化学実験をするためフード付き実験台をそろえるなど、国内有数の設備を整えた。iPS細胞のほかに、5〜100ナノメートル(ナノは10億分の1)の範囲を指す「メゾスケール」で細胞膜の分子の動きも研究する。

木曽教授は「岐阜大医学部の再生医科学の研究者らとも協同したい。iPS細胞を生かして難病のパーキンソン病やALS(筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症)の治療法確立につながるような基礎研究も展開したい」と話している。

26日には施設の披露式があり、アイセムスの中辻憲夫拠点長らが出席する。