『朝日新聞』2009年4月17日付

先端研究に破格の支援 政府、30テーマに2700億円


科学技術の研究者に1件当たり平均90億円に上る研究費を提供する支援策に政府が乗り出す。最先端研究で日本の国際競争力を高めるのがねらいで、国内の科学技術分野への支援金としては過去最大規模。早ければ夏ごろまでに約30テーマでリーダー役の研究者を選び、資金提供する。

16日の自民党の科学技術創造立国推進調査会で政府側が報告した。約15兆円の09年度補正予算案を含む経済危機対策の一環。

約3千億円の基金を日本学術振興会に設立する案が検討されており、うち2700億円を「世界最先端研究支援強化プログラム」(仮称)と呼ばれる研究資金に充てる。残りの約300億円は若手研究者の海外派遣事業に使う。

iPS細胞研究などの再生医学のほか、ナノテクや材料工学、環境・エネルギー技術などの分野が有力視される。内閣府や文部科学省によると、総合科学技術会議を拡大させた有識者会議をつくり、公募などを通じて集めた候補から、3〜5年後に世界的な成果が期待できる研究テーマと、その中心となる研究者を選び出す。

文科省は09年度に約3800億円の競争的研究資金を充てたが、特定の研究者に提供される最も額の大きい「戦略的創造研究推進事業」の場合、1件当たり最大で年間3億〜4億円、5年間で15億〜20億円。

研究資金は、事業によって年度をまたいで使える場合もあるが、あらかじめ申請した使途以外に使うことは難しい。このため、今回は研究資金を5年間にわたって自由に使えるようにし、研究に専念できる環境づくりをめざす。

(行方史郎)