『西日本新聞』2009年6月11日付

奨学金返還滞納 なぜ「ブラックリスト」登録 日本学生支援機構 梶山千里理事長に聞く


日本学生支援機構(横浜市)は本年度から、奨学金の返還滞納者の個人情報を金融機関が加盟する信用情報機関に登録する制度を始めた。滞納の抑制が目的だが“ブラックリスト”に登録されると融資を受けられなくなる可能性が大きく「厳しすぎる」との批判もある。この問題について同機構理事長の梶山千里・前九州大学長に聞いた。 (報道センター・野村大輔)

■「借りたら返す」も教育 猶予人数増やし配慮

‐現在の滞納状況と滞納する理由は何か。

「2007年度の未返還額は約645億円で、要返還者約250万人のうち約30万人が滞納者だ。滞納する理由は経済状況の悪化が主だが、意図的に返さない人もいると思う」

‐機構は十分な回収努力をしてきたのか。

「日本学生支援機構は04年、日本育英会の事業を継承して発足、催促や啓発を徹底してきた。この結果、04年度に93.4%だった新規の返還金回収率は、07年度には94.7%にまで改善した。しかし、育英会時代の奨学生を含めると80%台に落ちてしまう」

‐ブラックリストに登録されると、クレジットカードを作れなかったり住宅ローンを組めなかったりする恐れがある。

「返還金は次世代の奨学金の財源で、返してもらうのが前提だ。返還猶予制度もあり、周知してきたが、その手続きすらしない人には一定のペナルティーは仕方がない」

‐リストへの登録をちらつかせた奨学金支給は教育の場にふさわしくないという議論もある。

「借りたものを返すのも教育だ。大半の人は返還しており、公平性も守らなければならない。考え抜いた末に登録が最も有効と判断した。ほかにいい手段があれば教えてほしい」

‐不況下で根本的な対策も必要なのでは。

「景気の悪化で、奨学金の希望者や返還猶予を求める人はさらに増えるだろう。補正予算で返還を猶予できる人数を4万人から10万人に増やし、無利子奨学金の貸与人数も約8000人に倍増した。信用情報機関への登録も、より良い奨学金制度への改革と理解してほしい」