『読売新聞』宮崎版2009年6月11日付

宮大、研究者の育児支援


子育て中の教員や研究生を支援するため、宮崎大は搾乳室の設置や子育て中であることを知らせるバッジの配布を進めている。出産や育児などがハンディーキャップにならない環境を整備することで、女性の要職への登用や研究職離れに歯止めを掛けることが狙い。(毛利雅史)

宮崎大医学部(清武町木原)は2006〜07年度、「女子大学院生支援プログラム」を実施。同学部の敷地内に病後児保育室を備えた保育園を開設し、学会への旅費の補助などの経済支援を実施した。

このプログラムの一環で、教員や卒業生らを対象に、学内の委員会などの意志決定機関に登用する女性数の数値目標を設定することについてアンケート調査を実施。その結果、賛成が16%、反対は50%に達した。女性教員を支える同大清花Athenaサポート室は「宮崎大医学部では『実力で評価すべき』として、数値目標に反対する人が多いようだ」とみる。

一方、同サポート室によると、同大の女性教員は昨年4月1日現在、609人中81人(13・3%)、女性の大学院生は297人中86人(29%)。女性教員の割合は全国平均の11%をやや上回るものの、国が定める自然科学系の女性の採用目標(25%)を達成するのは難しい状況だという。

こうした現状を踏まえ、同大は08年度から文部科学省の補助を受け、「逆風を順風に 宮崎大学研究者育成モデル」を3年計画で開始した。

事業では昨年9月、医学部に搾乳室と休憩室を備えた同サポート室を設置。先月14日には農学部などがある木花キャンパス(宮崎市学園木花台)にも開設した。サポート室には、社会福祉士の資格を持つ女性職員らが常駐。大学周辺の保育所の紹介のほか、家族の介護に関する相談にも応じる。

また、3月からは育児中の職員や、その職員の同僚など育児を応援する人をアピールするバッジとシールを作成して無料配布。入学式でこれらの取り組みを紹介するほか、企業から講師を招き、研究者を目指す女性への助言を内容とする講演会を開いている。

サポート室長で、同大フロンティア科学実験総合センターの伊達紫教授は「女性を優遇するのではなく、支援により研究環境を整えることが大切。それにより女性の実力が正しく評価され、大学のボトムアップや、若い人に研究職に魅力を感じてもらうことにつながれば」と話している。