『長崎新聞』2009年6月9日付

長崎大学病院、救命センター設置へ 長崎市新病院計画は見直し必至


長崎大学病院(河野茂病院長)は8日までに、最重症の3次救急患者を受け入れる「救命救急センター」を設置し、長崎市内では大学病院と市立市民病院にしかない新生児集中治療室(NICU)を大学病院に集約する方針を固めた。市は2013年度開院予定の新市立病院計画で救命センター設置と周産期医療の充実を明らかにしているが、計画の見直しを迫られるのは必至だ。

救命センターをめぐっては県内には国立病院機構長崎医療センター(大村市)にしかなく、県都長崎市に設置を求める声が以前からあった。長崎大はこれまで大学病院での設置に慎重な姿勢だった。昨年は県と歩調を合わせて市に対し、市民病院と成人病センター、日赤長崎原爆病院を統合して高機能病院を建設、そこに救命センターを設置するよう要望した経緯がある。

しかし、市は今年2月、長崎大、県の提案を拒否。市民病院と成人病センターを統合する計画を決定し、20床の救命センター設置を盛り込んだが、医師の大幅増員が必要なため計画の実現性を疑問視する声もあった。

河野病院長は「新市立病院で医師がどれだけ確保できるか不透明。大学でなければ対応が難しいと判断した。医師の臨床研修制度の見直しで救急分野が充実されることもあり、救命センター設置で研修医を引きつけたい」とし、早ければ年内にも救命センター設置を申請する考え。

一方、NICUはこれまで市民病院に15床、大学病院に9床あり、市民病院に重点化する方向だったが、昨年末、文部科学省が国立大全病院に整備する計画を決定。大学病院は市民病院の病床を集約しながら、13年度にはNICUと新生児の継続保育室(GCU)を合わせ30床程度を設置、緊急処置の必要な妊婦や赤ちゃんを受け入れる総合周産期母子医療センターを目指すことにした。既に今月からNICU6床が、医師や看護師らの配置基準を満たし診療報酬の加算対象となったという。

河野病院長は「未熟児医療の体制は両病院ともぎりぎりで、集約するしかない。大学は高度医療も担っており、母親が脳出血したときなどもすぐに対応できる」と話す。

長崎市の楠本征夫病院事業管理者は7日の公立病院関係者の会合で「救命センターを大学が先に設置するなら、市はそれに(体制を)合わせることになるだろう」とし、市が新病院で計画している地域周産期母子医療センター(42床)についても見直す可能性が高いとの考えを示した。