『朝日新聞』2009年6月5日付

東大、学内融資でも利息とります 「真の経営体目指す」


東京大学は今年度から、大学本部が学内の学部や研究所などに貸している資金について利息をとることを決めた。国立大学の法人化から6年目を迎え、「真の経営体を目指して、内部であっても頂くものはしっかり頂く」(本部財務戦略グループ)ことにした。徴収1年目となる10年度には1800万円程度の「収入」を見込んでいる。

東大には企業や個人から教育や研究など目的を限定された寄付金が年に50億〜60億円程度あり、翌年度以降に繰り越した分の累計は約300億円。年度ごとの通常の予算とは別に、これを学内資金として国債などで運用していて、学部などから施設の建築費や改修費などで借り入れ要請があった場合には、ここから貸している。これまでは無利子だったが、貸さずに運用していれば運用益が出ていたとして、それに相当する額を利息としてとることにした。利息は年度末の残高に応じて翌年度に徴収。ただ、返済中の分については今年度は猶予して来年度から徴収する。当初の利率は年0.8%としている。

東大によると、08年度には医学部の施設改修費に3億円、07年度には数物連携宇宙研究機構の施設建設費に20億円、医学部付属病院の看護師宿舎の建設費に8億5千万円の計28億5千万円を貸した。

田畑磨・本部財務戦略グループ長は「銀行などから借り入れれば2%以上の利息になる。今回の制度なら、大学全体にも借り入れた部局にも、メリットがある」と言う。これに対し、利息を払うことになる部局の幹部は「払うべきものは払うが、大学からはその分、十分な支援をお願いしたい」と注文をつけている。

学内でも利息をとる制度は一部の国立大ではすでに導入しているが、リーダー格の東大が導入したことで、今後、他大学にも波及しそうだ。

文部科学省国立大学法人支援課は「学内の資源配分なので利息をとっても問題はない。法人化前には考えられなかった新たな発想で、法人化のメリットが活用されているといえる」としている。(杉本潔)