『朝日新聞』2009年6月3日付

5年で衛星34機打ち上げ目標 政府の宇宙基本計画決定


政府の宇宙開発戦略本部(本部長・麻生首相)が2日、宇宙開発利用の国家戦略となる宇宙基本計画を決定した。一連の計画に必要な予算や人員は盛り込まれなかったが、添付した別紙で「官民合わせて最大2.5兆円の資金が必要」との試算を初めて示した。

計画は今後10年間を見通して5年間に推進すべき施策と位置付けられている。

安全保障の分野では、現在3機で運用している情報収集衛星について「4機体制を実現する」とした。さらに、懸案とされる早期警戒衛星については「センサーの研究を推進する」とした。今年末を目標に見直しが進んでいる防衛大綱との「整合性を確保する」として、弾道ミサイルを探知する早期警戒衛星そのものについて踏み込んだ記述にはならなかった。

計画では宇宙の開発利用を拡大させるため、地球観測や災害時の情報把握、科学研究などの分野で、人工衛星の打ち上げ回数をほぼ倍増させ、5年間で34機を目標に置いた。このうち月探査では、2020年ごろにまず二足歩行ロボットなどによる無人探査を目指す。有人宇宙活動については「1年程度をかけて意義、成果、資金見積もりなどを検討する」とした。

野田宇宙開発担当相は記者会見で「有人活動は計画の大きな柱」と述べ、麻生首相が出した指示に基づき、ただちに検討を開始すると表明、1年後をめどに方針を明確化させる考えを示した。

宇宙開発予算は今年度当初の時点で約3500億円。試算で出された2.5兆円の資金については、民間からの投資を含んだものだが、資金を確保するには現状をはるかに上回る予算が必要となりそうだ。(行方史郎)