『毎日新聞』2009年5月13日付

少子化対策PT:第7回/教育費の負担重い日本 大学の学費は家計の53%に


少子化問題に取り組む「ゼロから考える少子化対策プロジェクトチーム(PT)」(主宰・小渕優子少子化対策担当相)の第7回会合が12日、内閣府で開かれた。「学校教育」をテーマに、現状と問題を議論し、将来施策への提言を話し合った。

PTメンバーは、NPOファザーリング・ジャパン代表理事の安藤哲也さん、経済評論家の勝間和代さん、第一生命経済研究所主任研究員の松田茂樹さん、日本テレビ解説委員の宮島香澄さん、東京大学社会科学研究所教授の佐藤博樹さん。このほか有識者として、学校選択制など新しい取り組みを次々に進める東京都品川区教育委員会の若月秀夫教育長、教育費に詳しい東京大総合教育研究センターの小林雅之教授を迎えた。

若月さんは、公立学校に通う小中学生の教育費は、塾の費用を除いても1人当たり年間約40万円で、10年前から3割増加していると報告。国の就学援助が縮小傾向にあり、「高齢者と比べ、子どもや若者への財政支出ははるかに手薄。家庭の負担感は増している」と訴えた。品川区では3割の児童が公立中学校へ進学をせず、家計への負担が大きい私立中学校に流れているという危機感から学校選択制を導入した経緯を語った。

教育費の分析や諸外国との比較をしている小林さんは「少子化の原因の一つは重い教育費の家計負担にある」と指摘した。日本では大学など高等教育費の負担が重く、家計に占める割合は53%と世界一だったという。さらに成績上位生徒の場合、親が低所得でもあっても、家計から無理をして教育費をねん出している実態が明らかにされた。小林さんは奨学金制度について触れ、現状では規模や変換方法などに課題が少なくなく、授業料とセットの改革▽所得連動型ローンや教育減税などの施策▽一人ひとりに応じたきめ細かな対応−−が必要で、「親子とも教育費や奨学金に関する知識や活用力をつけ、人生設計に生かせるよう啓発するべきだ」と提言した。

小渕担当相は「半分は大臣として、半分は子どもの親として聞いていたが、教育費については頭が痛いなあと思った」と漏らした。また「昔の人は『金がなくても子は生まれ育つ』と言うけれども、今の子どもや若者が抱える問題は確かにあり、学力や経済の『負の連鎖』も明らか。国として予算配分をしていかなければならない」と語った。少子化対策PT関連では、20日に大学生との討論会「アラハタ世代と考える恋愛、結婚、仕事、出産、子育て」、26日には「家庭・地域・まちづくり」をテーマに第8回会合が行われる。【浜田和子】