『山梨日日新聞』2009年5月9日付

自主財源確保が課題
都留文大法人化1ヵ月
助成金得られる研究奨励


4月に都留文科大が公立大学法人に移行してから1カ月。法人化で大学の裁量権が拡大した一方で、一層の自助努力が求められるなど経営責任も明確化。これまで歳入を支えてきた市交付金も削減される可能性があり、自主財源確保が大きな課題となっている。大学は魅力ある研究テーマを拡充することで、学生や国の研究助成金獲得を目指すが、効果は未知数。「自立経営」への道筋はまだ見えていない。

▼赤字の可能性も

「スピード感ある経営を展開し、地域に根ざした大学をつくり上げたい」。4月1日に開かれた法人化記念式典。西室陽一理事長はあいさつの中で意思決定の迅速化を繰り返し要求し、大学職員に意識改革を訴えた。

4月1日から公立大学法人に移行した都留文科大。法人化により予算編成や人事などで市の関与が低くなり、大学運営の自主性が高まった。一方で、中期目標を策定し、定期的にチェックするなど今まで以上に経営面での努力が求められるようになった。

さらに、経営面で重くのしかかるのが歳入の3割を占める運営費交付金の削減だ。市は来年度以降も当面、運営費交付金を減額しない意向だが、原資となる地方交付税は年々減少。交付税算定の根拠となる大学生1人当たりの単位費用はピーク時に比べ、4割近く減っており、「数年後に赤字決算に陥る可能性もある」(市の財政担当者)。

こうした状況の中、大学は中期計画(2009−15年度)で教員就職者を07年度の138人から4割増の200人とする数値目標を設定。民間企業も含めた就職率も80・1%から85%まで引き上げる。

大学のPRを目的とした高校訪問も300校から400校に増やし、少子化で大学全入時代と言われる中、「就職に強い大学」をアピール。入学生を確保することで、授業料収入の維持、拡大を図る考えだ。

▼迅速な意思決定

また、外部資金を獲得できる研究を奨励するため、これまでは研究者に一律支給していた研究費にインセンティブ(誘因)を導入することを検討。審査委員会が「魅力ある研究」と認めれば、研究費を上乗せする。大学総務課は「優良な研究を全国に発信し、国の研究助成金などの獲得につなげる」と強調する。

ただ、民間企業との共同研究で特許取得も見込めるなど、比較的、外部資金の獲得が容易な理系大と比べ、文系の都留文大では「大幅な自主財源増は見込めない」(大学総務課)のも実情。「当面は小さな取り組みの積み重ねで、外部資金の獲得を進めていくしかない」という。

大学運営の自由度が増した一方で、より経営の自立性が求められている都留文科大。西室理事長は「学生の確保など競争が厳しくなる中、従来通りのやり方では生き残れない。意思決定を迅速に行い、時代の流れにマッチした大学づくりを進める必要がある」と話している。