『朝日新聞』2009年5月6日付

衛星小さく、開発費安く 国が民間・大学の参入後押し


人工衛星を使ったビジネス開拓を後押しするため、文部科学省と経済産業省は重さ20〜50キロの「超小型衛星群」の開発に乗り出す。ベンチャーや大学からアイデアを募って、宇宙航空研究開発機構などと共同で5〜10機の実証機をつくり、数年以内の打ち上げを目指す。

人工衛星からの画像や観測データは、農作物の生産量予測、災害監視、資源探査など、さまざまな分野でビジネス展開が考えられる。だが、重さ500キロ〜数トンの中・大型衛星は開発に数十億円以上の費用と5年以上の期間がかかり、ベンチャーや大学などが参入するのが難しかった。

重さ50キロに満たない超小型衛星なら、機能は限定されるが、短期間、低コストの開発が可能になる。計画では、ベンチャーや大学から衛星にどのようなカメラやセンサーを搭載するのかや、ビジネス展開に向けたアイデアを募り、宇宙機構が衛星づくりの基本部分を支援する。

衛星は一辺50センチ程度、重さ20〜50キロに抑え、市販部品を使うことなどで、製造コストを数億円以下にする。費用の3分の1程度をベンチャーや大学側に負担してもらう。宇宙機構は今年1月に一辺約70センチ、重さ約100キロの小型実証衛星を打ち上げており、今後、小型化技術をさらに磨く。

政府の経済危機対策の一環で、両省が開発費計約50億円を補正予算案に盛り込んだ。

超小型衛星は一度にたくさん打ち上げられ、将来的には数十機を組み合わせるなど、多様な運用も見込める。今月策定される政府の宇宙基本計画も、原案で、超小型衛星について「ベンチャーや大学への支援推進を通じて、産業拡大、雇用創出に当たる」などと開発を促していた。

宇宙機構は06年から超小型衛星を公募しているが、これまでは研究開発や教育目的に限られていた。従来の公募でつくられた東大阪宇宙開発協同組合の「まいど1号」など6機が、1月に大型衛星に「相乗り」する形で打ち上げられた。(行方史郎)