『中日新聞』2009年5月6日付

「名大をグローバル化」 就任1カ月の浜口学長
 

名古屋大の浜口道成学長(58)が就任して1カ月。昨年、ノーベル賞受賞者が相次ぎ、底力を世界に発信した名大の新学長が掲げるのは「グローバル化」だ。大学法人化2期目に向け、どうかじ取りするか意気込みを聞いた。 (聞き手・渡辺泰之)

−どのような大学を目指すのか。

「名古屋大」を英語の「ナゴヤユニバーシティー」にしていく。中部地区だけにとどまっていられる時代ではない。この地域の産業は世界トップレベルだが、われわれ教育界はそこまで達していない。

また、法人化2期目の重要な課題の1つが財務。国は今後も運営費交付金を削減してくるだろう。どう次世代への活力をつくり上げていくか。間違えれば、名大であっても消滅していく運命にある。この地域の特性を生かした国際化戦略を練っていくことが生き残る道だ。

−グローバルに活躍できる人材をどうつくるのか。

私がいた医学部は海外の一流校と提携している。留学して鍛えられると、学生は自分の中に眠っている可能性に気が付き、がらっと変わってたくましくなる。これと同じことを味わってほしい。本年度、1年生から英語を集中的に学ぶプログラムがスタートしており、英語で議論できる能力をつけさせていく。

−大学生の学力低下が叫ばれている。

普遍的な真理に対する飢餓感がなくなってきていると感じている。昨年、ノーベル賞を受賞した益川、小林、下村先生を生んだ原動力は知識に対する飢餓感。今は全く逆で、インターネットなどを通して情報はあふれているが、飢餓感を持って知識にぶつかるということがない。

−大学教育の現状をどう考えるか?

諸外国に比べて、高等教育に対する国の投資が少なすぎる。この現状もあまり知られていない。ある総理大臣が「米百俵の精神」と言ったが、これが実現できていない。苦しい時代だからこそ高等教育に投資し、人材をつくり上げることを国全体でやらないといけない。

−創薬科学研究科の創設が検討されているが。

現状は、県内の4私立大と協力し、大学院を設置すべく議論を進めている。この地域はバイオが弱い。東京や関西に人材が流れてしまっている。社会へのメッセージとしてもやらないといけない。課題は多いが、1年間くらいかけて議論し、結論を出したい。