『毎日新聞』2009年4月28日付

宇宙基本計画:計画案、早期警戒衛星研究盛る 安保など積極活用


政府の宇宙開発戦略本部の専門調査会は27日、宇宙開発利用分野で初の国家戦略となる宇宙基本計画案をまとめた。弾道ミサイル発射をいち早く検知できる早期警戒衛星の開発に向けた研究着手を盛り込むなど安全保障や産業振興、国民生活などに積極的に宇宙を活用していく姿勢を前面に打ち出した。

基本計画は10年程度先を見通した5年計画で、昨年8月に施行された宇宙基本法に基づき策定される。今後、国民から意見を求め、5月末に決定する。

計画案によると、地球環境観測や高度情報通信、宇宙科学など9分野に分けて人工衛星の開発を推進。09〜13年度に現状の2倍にあたる34基の衛星打ち上げを目指す。必要な予算や人員の確保は「財務省と協議している」として、「検討中」と書くにとどまった。

有人宇宙活動については従来の路線を転換。月の資源調査などを目的に「有人を視野に入れたロボットによる月探査」を掲げた。まず20年ごろに日本の得意とする二足歩行ロボットなどによる無人探査を行い、次の段階として人間とロボットの連携による本格探査を目指す。しかし、有人ロケット開発については明記せず、将来の輸送システムの研究開発で「月探査などにも留意する」と述べるにとどめた。

また、「安全保障分野の宇宙の役割は今まで以上に高まっている」と指摘し、防衛分野で必要な衛星は新しい防衛計画の大綱などの議論の中で検討する。【西川拓】

◇巨額支出、慎重論も−−防衛省
政府が27日にまとめた宇宙基本計画案には、早期警戒衛星の研究推進が盛り込まれた。北朝鮮の弾道ミサイル発射の探知を、米国の早期警戒衛星に依存しているため、自民党を中心に自前の早期警戒衛星を保有すべきだとの声が強まっている。一方で、巨額の支出が必要なことから、防衛省内で慎重論も根強く、年末に改定される防衛大綱・中期防衛力整備計画(中期防)での主要論点となりそうだ。

早期警戒衛星は、約3万6000キロ上空の静止軌道から、赤外線センサーで地球上の熱源をとらえ、ミサイルの発射を確認する機能を持つ。

自民党国防族を中心に「宇宙基本法が成立したのだから、自前の衛星を持つべきだ」との意見が強まっているが、早期警戒衛星は1基あたり5000億円以上かかると言われる。地球全体をカバーするには3基程度は必要で、データベース構築も加えれば兆円単位の予算が必要となる。【仙石恭】