『毎日新聞』京都版2009年4月20日付

対談:ノーベル賞の益川氏と尾池・京大元学長、大学運営や平和運動語る


◇授業料値上げに苦言−−尾池氏
◇空襲を体験「戦争は嫌」−−益川氏

ノーベル物理学賞受賞者の益川敏英・京都産業大教授と、尾池和夫・京都大元学長の対談「京都大学と学問・社会 人類の未来」が19日、左京区の京大であった。2人は大学運営のあり方や平和運動について語り合い、学生ら500人が聴き入った。京大職員組合OB会が主催した。

益川氏は京大で基礎物理学研究所長などを歴任し03年に退官、尾池氏は03〜08年に学長を務め、2人とも組合幹部を務めた。

大学運営や教育について、益川氏は「もうかる研究は他でできても、基礎研究は大学しかできない。学歴の階層化が進み、学費が高くなっているが、勉強したい人が勉強できる社会にしてほしい」と話し、尾池氏も「国立大学の法人化と共に授業料も値上げされた」と苦言を呈した。

2人とも1940年生まれで戦争体験を持つ。益川氏は、名古屋の空襲で自宅に不発の焼夷(しょうい)弾を受けた記憶を語り、「不発でなければ死ぬか大やけどをしていた。そんな思いは子供たちにはさせたくない。戦争は嫌だ」と話した。尾池氏も「戦争体験がない若い世代には、世界中にいる戦争の被害者の話を聞いてほしい」と訴えた。【熊谷豪】