『毎日新聞』2009年4月18日付

東大:新学長、入試制度改革「すぐに検討」


東京大の第29代学長に1日付で就任した浜田純一氏(59)が17日、東京都文京区の同大学で就任の記者会見を行い、筆記試験で学力を測る入試制度について「公正さという意味では完ぺきだが、優れた人材をすべてすくい取れているのか。今に代わる仕組みがあるのか、すぐに検討を始めたい」と述べ、改革に着手する考えを示した。(4面に「ひと」)

浜田学長はメディア法の専門家で、総務省の電波監理審議会会長も務めている。「メディアはこれまでのように事実を社会に伝えるだけでなく、次の時代をどうすれば良いのかといったメッセージも出していくべきだ」と報道機関に注文を付けた。【井上俊樹】

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ひと:浜田純一さん 東京大学第29代学長

「東京大学は旗艦大学として全国の国立、私立大学と連携しながら、日本の知の水準を着実に高めていく責務を負っている」。17日の就任会見で、創立133年目を迎えた東大の第29代学長を務める重責をそう語った。

モットーに掲げた「知の公共性」という言葉には、単に高等知識を身につけることだけではなく「その知識を用いて、誰もがより快適に安心して生活できる社会づくりにいかに寄与するか」という意味が込められている。学生たちには「アフリカの砂漠や中東の都市、アジアの村にも入って行って世界に貢献してほしい」と訴える。

そのための課題が大学自身の「国際化」だ。東大の外国人教員比率は5.1%、留学生比率は6.6%。いずれも20%前後に上る米国の主要大学と比べて大きく見劣りする。留学生や外国人研究者の増員、外部人材の登用など、小宮山宏前学長が進めた改革路線を継続し、「交渉力と行動力を備えたタフな東大生を育てていきたい」という。

自らを「マイノリティー出身」と評す。歴代学長を法学部や工学部など有力学部の教授出身者が占める中、初めての研究所(新聞研究所)教授出身の学長。しかも初の戦後生まれだ。「周りの話によく耳を傾け、柔軟な発想がある。周囲に安心感を抱かせる存在」と部下が評する包容力で、学生数約2万8000人の巨艦のかじを取る。【井上俊樹】

【略歴】浜田純一(はまだ・じゅんいち)さん 兵庫県明石市生まれ。72年東大法卒、80年法学博士。専門はメディア法。趣味は山歩き。任期6年。59歳。