『毎日新聞』北海道版2009年4月17日付

新教育の森:ほっかいどう 不況の影、大学生活にも波及


◇奨学金申請が急増 独自制度や特別枠創設

深刻化する世界的な不況が大学生活にも暗い影を落としている。経済的に厳しい生活を余儀なくされる学生が増え、今春の新入生たちが行った奨学金や学費免除の申請件数が急増している。独自の奨学金制度を作る私立大もあり、各大学は対応に追われている。【千々部一好】

□■予算不足も

1、2年生が学ぶ北海道大(札幌市北区)の高等教育機能開発総合センター。1階の奨学金の申請窓口には、新入生らが次々と訪れた。法学部に入学した自宅通学の女子学生(18)は「昨秋のリーマン・ショックの影響で、親の収入が減ったと話す友人がクラスにいます。うちも経済的に大変なので、二つの奨学金と塾講師のバイトで生活費のほか、学費の一部も自分で出したい」と話す。静岡県から工学部に入学した男子学生(18)は「高校2年のとき、家が全焼し大変なことになった。幸い無利子の奨学金がもらえたので、いいバイトを探して親に負担をかけないようにしたい」という。

奨学金の説明会は3日間連続で開かれたが、参加者は延べ約1200人と昨年より200人以上増えた。

一方、年収の少ない家庭や成績優秀者を対象にした授業料免除の申請手続きも行われており、工学部では437人が申請し、昨年の365人を約2割上回った。大学側は授業料免除の費用として5億2000万円を見込んでいるが、工学部同様に全学部で2割以上増えれば、予算が足りなくなる事態も懸念される。

□■授業料を給付

札幌大(札幌市豊平区)、札幌学院大(江別市)、北海道医療大(石狩管内当別町)の道内私立大は今春、授業料や入学金などの一部を給付する奨学金制度を独自に作った。

札幌学院大は約1700万円の予算を確保し、年間授業料の半額(10人程度)、前期授業料の半額(20人程度)を給付する。ゴールデンウイーク明けに応募を締め切るが、「3月下旬の入学者向けプレ・ガイダンスでも相談に来る学生や保護者が多く、予想していた以上に関心が高い」(学生課)という。

札幌大では2人、道医療大では23人が大学独自の奨学金を受け取った。

□■今月から募集

奨学金を扱う日本学生支援機構(本部・東京都新宿区)は今春、全国の新入生対象の奨学金について昨春より約7500人多い約35万1000人分(予算ベース)を用意した。今月から募集を始め、7月から支給する。

同機構は金融不安に対処するため、昨年11月に奨学金の臨時募集を初めて行った。90年代のバブル崩壊期にもなかった異例の措置で、予想の倍以上の9000人を超える申し込みがあった。今春も通常の募集枠に加え、5500人の特別枠を設けて、奨学金の急増に対処する。

同機構は「来春、進学予定の高校3年生向けの奨学金の予約募集も追加する予定。経済的な困難から進学をあきらめる事態が出ないようにしたい」(広報課)と話している。=金曜日に掲載します