『読売新聞』2009年4月19日付

大学病院「総合診療部」次々廃止に…不採算のうえ不人気


臓器別に細かく専門分化され過ぎた医療への反省から、患者を総合的に診ようと設立された「総合診療部」を、統廃合する大学病院が相次いでいる。

医師不足や財政難が理由だが、診断のついていない患者の受け皿がなくなるうえ、若手医師を育てる場が減ることを懸念する声も出ている。

総合診療部は2000年前後までに、約50大学病院に設置。ところが、05年9月に北海道大が廃止。07年4月には杏林大が廃止した。新年度からは京大が廃止し、群馬大は救急部と統合した。それ以前には02年9月、設立の翌年に廃止した島根大の例もある。

廃止理由について、北大は「利用度が上がらなかった」と説明。杏林大は「専門の診療科の方が患者に人気がある。総合診療を担当する医師も少ない」とする。京大病院は「専門診療科への引き継ぎなどがスムーズにいかず、効率的でない面があった」としている。ほかにも廃止を検討しているところもある。

ある大学病院の総合診療医は「総合診療は時間がかかる割には、手術や高額な検査を行わず、経営側から見れば不採算部門。経営に余裕がなければ風当たりが強くなる」と漏らす。

臓器別の専門診療科よりも地位が低く見られがちなことも、医師側に不人気な理由としてあるという。

日本総合診療医学会副運営委員長の大滝純司・東京医大教授は「総合診療科は、診断のついていない患者の初期診療を担い、臓器別の専門診療科からこぼれてしまう患者の受け皿になるとともに、医師教育の役割もある。研修医に人気のある一般病院ではむしろ増えている」とこうした動きに懸念を示す。同学会では近く、全国の大学病院の総合診療部にアンケートを行い、活動状況を調べる。

患者の視点から開かれた医療の実現を目指すNPO法人「ささえあい医療人権センターコムル」の辻本好子理事長は「大学病院の総合診療部には、高齢化が進む中で必要性が高まっているプライマリーケアを担う人材育成の場として期待を持っているので、統廃合の動きは残念に思う」と話している。