『朝日新聞』2009年4月17日付

NICUなど220床を追加 文科省、24大学病院に


危険が大きい出産に対応するため、文部科学省は、国公私立の計24の大学病院に「新生児集中治療室」(NICU)など計約220床を追加設置することを決めた。政府が調整中の補正予算案に盛り込む。

ハイリスクの出産をめぐり、東京都内で昨年10月、妊婦が複数の病院に受け入れを断られて亡くなっている。この問題をきっかけに、NICUの増床など周産期医療設備の充実が指摘されていた。

文科省によると、NICUがない大学病院は現在、国立が全42校中9校、私立が全29校中2校。また、NICUなどの周産期医療設備が20床以上あるのは国立が8校なのに対し、私立は21校。公立は3校。整備は私立が進み、国立が遅れているのが現状だ。

このため、文科省は今年度当初予算で、NICUがない国立大学病院9校のうち5校、すでにある5校の国立計10校に、NICUを37床、NICUを出た乳幼児の経過観察などのために使う「継続保育室」(GCU)を46床設ける経費を盛り込んだ。

さらに今回、NICUがなかった山梨のほか、旭川医科、金沢、京都、滋賀医科、広島、島根、山口、愛媛、長崎、熊本などの国立16校▽名古屋市立、大阪市立の公立2校▽慶応、NICUがなかった川崎医科などの私立6校の計24校に、NICU54床、GCU124床、「母体・胎児集中治療管理室」(MFICU)45床を設ける。文科省は計223床の費用として、今年度当初予算分(10億円)の約4倍の39億円を補正予算案に計上する方針だ。

今年度当初予算と補正予算で、国立大学のNICUの床数は昨年度末時点の244から73増えて317に。NICUとGCU、MFICUを20床以上備える国立大学は13校増えて21校となる。

NICUを設置するためには、専任の医師を置く必要がある。文科省は各大学病院に「医師を確保するにしても、地元の他病院にいる医師を呼び戻すような対応は、地域医療への打撃となるのでやめてほしい」と求めている。(青池学)

【NICUなどが整備される大学病院】

■国立16校(N36床、G105床、M27床)

旭川医科、弘前、新潟、群馬、☆山梨、信州、富山、金沢、京都、滋賀医科、広島、島根、山口、愛媛、長崎、熊本

■公立2校(N6床、G7床、M3床)

名古屋市立、大阪市立

■私立6校(N12床、G12床、M15床)

慶応、東京医科、愛知医科、大阪医科、☆川崎医科、産業医科

《注》☆はこれまでNICUがなく、今回整備される病院。かっこ内は床数。NはNICU、GはGCU、MはMFICUの略