『産経新聞』関西版2009年4月14日付

大阪大産研、ナノテクで産業界と連携 支援施設建設へ


大阪大学は13日、同大学の産業科学研究所(産研)=大阪府茨木市=の新施設としてナノテクノロジー(超微細技術)に特化した共同研究を支援するインキュベーション施設を建設すると発表した。ナノテク分野で産業界との連携施設を設置するのは全国で初めて。来年3月の完成を目指す。IT(情報技術)、バイオなど幅広い先端産業にかかわりを持つナノテクの研究成果などを中小企業に開放し、大学、企業の連携を加速することで、次世代型の情報機器や治療方法の実用化につなげる。

インキュベーション施設は地上5階・一部地下1階建てで延べ床面積は5000平方メートル。十数億円かけて建設し、3階、4階の24室(1室あたり60平方メートル)を、民間企業に1カ月あたり18万円程度で貸し出す。5階には、解析機器などを共同で利用する「科学教育機器リノベーションセンター」を置く。

主な入居対象として半導体などの電子部品、材料、医療、環境などナノテクに関連する分野を手がける中小企業を想定。入居企業は、研究を進めるさいに大学の研究者の協力を得られるほか、解析機器や電子顕微鏡、電子露光装置などナノテク研究に必要な産研の設備を活用できる。

産研はナノテク分野で、北海道大、東北大、東京工業大、九州大の各研究所を結ぶネットワーク型共同研究の中核拠点になっている。各大学から研究室を誘致するほか、ナノテクへのニーズが高い東大阪市内の中小企業との連携も強化するなどで、ナノテク技術の実用化に力を入れる。

阪大は平成16年度に国立大学法人化して以降、産研の組織改革や、海外の研究機関との連携にも力を入れている。

産研の山口明人所長は「中小企業が国際競争力をつける上で、ナノテクは大きなポイントになる。大学と中小企業の研究成果の融合を進めることで、新しい形の技術革新につなげていきたい」と話している。