『読売新聞』社説 2009年3月31日付

国立大法人評価 教育研究の質向上につなげよ


大学に対する評価は、質の向上に役立つものでなければなるまい。

文部科学省の国立大学法人評価委員会が、86の国立大学法人に対する評価結果を公表した。評価する項目や基準を検証し、見直していく必要がある。

国立大学は2004年度に法人化したのに伴い、教育・研究の質や業務運営、財務内容について、6年間の中期目標とそれを達成するための中期計画を立てて、評価を受ける仕組みになった。

目標の達成度が5段階で評価され、結果は国から配分される運営費交付金の一部に反映される。今回は、07年度まで4年間の暫定的な評価結果である。6年間を終えた時点で、残る2年間と合わせて結果が確定する。

各大学とも、大半の項目は「おおむね良好」という真ん中以上だった。一部に「不十分」もあったが、最低の「重大な改善事項がある」という指摘はなかった。

始まったばかりとはいえ、評価にあたった関係者からは「評価が甘かった」との声が聞かれる。

目標の設定や計画の認可には文科省も関与するが、実質的には大学の立てた目標と計画が評価の基になっている。目標が低ければ達成度は高くなり、目標が高すぎれば達成度は低くなりかねない。

国立大学は私立大学と異なり、公的機関として高等教育を受ける機会を提供する使命や、地域に貢献する役割も持つ。こうした面での業績について、今回の結果はどう判断したのかわかりづらい。

まもなく10年度から始まる次の中期目標を決める時期になる。

大学をめぐっては、世界的な教育・研究拠点、地域貢献など、機能別に分化させていくべきではないかという議論が活発だ。

評価結果をどの程度、運営費交付金の配分に反映させるのか早急に決定すると同時に、こういった大学ごとの役割を踏まえた目標設定や評価も大切だろう。

この評価とは別に、国公私立大学は、外部の機関から7年以内に1回、第三者評価を受けることが義務づけられている。こちらは、外部機関の基準で判断する。

今回の国立大学法人に対する教育・研究面の評価は、実際には評価委の要請で大学評価・学位授与機構が担当した。第三者評価も同機構が行うケースは多い。違いが見えにくい。

膨大な準備が必要となる大学側の「評価疲れ」が指摘される。二つの評価をもっと整理し、大学側の負担を減らす工夫も重要だ。