『読売新聞』高知版2009年3月31日付

「教員支え研究力向上」高知工科大公立化、岡村新理事長に聞く


地域貢献、大きな柱に

全国4例目となる公設民営の私立大として12年前に開学した高知工科大(高知県香美市土佐山田町)が、公設民営型大学のトップを切って4月に公立大学法人化する。これまで知事や副知事が兼務してきた理事長には、前学長の岡村甫(はじめ)教授(70)が初めて専従で就任。東京六大学リーグで東大野球部史上最多の17勝を挙げたエースが、工科大の発展に向けて“再登板”する。目指す方向や意気込みなどを聞いた。

(島田喜行)

公立大学となるメリットは何ですか。

授業料が半額になることで、経済的に恵まれない人でも十分進学できるようになるのが一番大きいです。また、私立大では授業料を学生に還元するのが第一で、研究費に回すことはできませんでした。公立大では、教育優先だった制約がなくなり、交付金を教育と研究に自由に配分できます。研究力の向上につながると思います。

何を果たすべきで、どの方向を目指しますか。

これからは国民の税金で運営するので、何かを還元しなくてはいけません。地方大として特色を出すため、地域貢献を大きな柱に、学長のかじ取りの下にオンリーワンを目指します。

理事長の仕事をどう考えますか。

事務職員をまとめて教員をサポートすることが主な任務です。大学の主役は教育、研究を行う教員。極論を言うと、理事長はなくても大学運営はできます。しかし、教員が研究だけに全力で集中できる環境をつくることは、大学の発展にとって重要です。ローマ軍が強かったのも食糧などを補給する兵站(へいたん)がしっかりしていたからです。

理事長として何を目指しますか。

「日本一の大学事務局」という夢を描いています。そのためには事務職員が幸せでないといけない。無理な残業や休日出勤はさせないつもりです。仕事以外の生活を大切にしてほしいのです。それができて初めて学生を幸せにできると考えています。

事務局を向上させるには何が必要ですか。

上に立つ人間には、管理者ではなく、うまく人を配置できるマネジャーになってほしいと思います。間違ったことを強制して、しかも従わないと非難する「管理職」にはなってはいけません。各人の能力に見合った仕事を的確に与えてあげることが大切。足の遅い選手を中堅手にしても仕方ないですから。

最後に大学としての目標をお聞かせ下さい。

研究とそれを支える事務が一体となって、世界で一流の大学を目指します。それをやめてしまったら、二流に成り下がってしまいます。学長とともに〈2段ロケット〉で頑張っていきます。