『読売新聞』高知版2009年3月20日付

工科大に志願者殺到
一部40倍超 来年以降は沈静化か


毎年定員割れで悩んでいた高知工科大(香美市土佐山田町)の2009年度入試で、新年度から公立大学法人となることから前年度比7・8倍の志願者が殺到、志願倍率が40倍を超える学群もあった。複数回受けられ、科目数が少ない私大型の試験で公立大に入学できることが受験者増につながったとみられ、半額ほどになる授業料や、国公立大の合格実績を上げたい高校側の思惑も拍車をかけた。しかし法人化後は、全国の国公立大に準じた前後期の分離分割方式に変わることになっており、福田直史・入試広報部長は「この現象は今年限り。来年から倍率は2〜3倍に落ち着くだろう」と分析している。

同大によると、個別試験を課さないセンター利用1次の工学部システム工学群の試験で、12人の定員に558人が応募し、志願倍率は46・5倍。環境理工学群でも45・3倍となった。

個別試験を課す一般入試A1でも、システム工学群で定員38人に779人が応募し、志願倍率は20・5倍、受験者数を合格者数で割った実質倍率でも11・4倍となった。福田部長は「受験者増は予想していたが、はるかに超えた」と振り返る。

そのため、会場は例年よりも大規模な場所を押さえていたにもかかわらず、変更を余儀なくされた。1月31日から行われた一般入試A1の福岡会場では、80人収容できる会場から、直前に180人収容可能なホテル宴会場に急きょ変更。次々と届く願書の処理にも職員は追われ、試験当日は、学部長や研究科長も試験監督をするなどして乗り切った。

公立大学法人化すると、現在の年間授業料120万円(工学部)、94万円(マネジメント学部)が、53万8500円となる見通しで、受験者増の要因と見られる。また、国公立大の合格実績を上げたい高校側が、生徒に受験を勧めた例もあったという。

10年度入試から、センター試験の1次、個別学力試験の2次となり、今年のような受験者増はなくなる見通し。一方、公立大になると合格者の8割程度の入学が確実で、合格後の入学辞退者が少なくなり、大学側では入学者の計算ができるメリットがあるという。

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同大の発表によると、10年度入試の定員は460人で、60%を一般入試、40%を推薦入試で募集する。一般入試の2次試験は、前後期日程方式で行う。私大型で勉強していた現高校1、2年生に配慮して、前期試験では、センター試験が5教科7科目必要なA方式と、3教科3科目のB方式の2通りを導入。推薦入試では、定員の25%を県内高校卒業者枠、15%を全国枠として行う。