『読売新聞』三重版2009年3月20日付

豊田・三重大学長 「共感し合う地域を」
今月退任で最後の講演


今月末で退任する三重大学(津市)の豊田長康学長(58)が19日、同大医学部で、教職員や学生ら約180人を前に学長として最後の講演を行い、改革に取り組んだ5年間を振り返った。

豊田学長は、大阪大医学部卒。三重大医学部講師から1991年に同大教授になり、2002年に学長補佐を経て、04年4月、国立大学の法人化と同時に学長に就任。「地域に根ざし世界に誇れる独自性豊かな教育・研究成果を生み出す」を理念に掲げ、運営から経営への意識改革に取り組んだ。

学長としての最後の講演会では、「自己申告書」と題し、大学経営の計画、実行、評価、改善について、自らの自己評価を教職員らに報告する形で総括した。

豊田学長は、地域貢献を目指し、市町や企業などと連携するために協定を結んだことや、学生や教職員が協力して環境活動に取り組み環境管理の国際規格ISO14001の認証を取得したことなどを紹介した。

また、大学のホームページに開設した学長ブログを通じて積極的にメッセージを発信。「学長が身近に感じられ、三重大の動きがよくわかる」などと各方面から好評で、豊田学長も「トップ自らが情報発信することの大切さを痛感」と話し、最後に「学生や教職員が共感、共鳴する職場や地域づくりを目指してほしい」と締めくくった。

講演後に記者会見した豊田学長は、もっとも印象深いことについて、07年に政府の経済財政諮問会議で国立大の運営費交付金削減が議論された際、地方の国立大の意義を緊急声明で強く訴えたことを挙げ、「トップの役割は、自ら戦うことであると知った。それで大学内での一体感が生まれ、基礎固めができた」と語った。

豊田学長は4月から、同大学長顧問を務める。