『沖縄タイムス』2009年3月16日付

相談殺到 職員も懸念 奨学金滞納者ブラックリストに/日本学生支援機構 月12万件混乱も
「事情聞けぬまま進む」


旧日本育英会などが合併した独立行政法人日本学生支援機構が2009年度以降、3カ月以上の奨学金滞納者を全国の金融機関でつくる個人信用情報機関に登録する(通称・ブラックリスト)問題で、同機構への相談が月平均12万件、多い月で26万件と急増していることが分かった。同機構が15日までに明らかにした。同機構の職員からも「本来は返済免除や猶予に該当する人の相談さえ受けられないまま、ブラックリスト登録が進む」との懸念が出ている。(嘉数浩二)

同機構の奨学金は全国で約120万人が利用。07年度末の返還率は8割を切り660億円が未返還のため「安定運営には回収強化が必要」とし、方針は変更しないという。だが、奨学金相談の職員は40人。現場から「対応できない」との声が上がる中、金融機関からの借り入れやローン、クレジットカード利用を困難にするブラックリスト登録が強行≠ウれる。同機構は独法化に伴う設置法で職員数が定められており、運営面は所管する文部科学省が大きな影響力を持っている。

今秋、70人超のコールセンターを新設する予定だが、その間も手続きは進む。同機構労組(学支労)の岡村稔書記次長は、滞納理由で経済問題が最も多いことを挙げ、「若者の不安定雇用や家族の病気など問題は複雑。コールセンターを設置しても、経験のない非常勤職員では相談に応じられない」と批判。信用情報機関に登録する手法自体が混乱の原因とし、「強硬策を続ければ経済的に厳しい学生ほど進学をあきらめる。教育の機会均等をうたう奨学金制度が崩壊する」と危惧した。

県内で奨学金問題に取り組む沖縄なかまユニオン(比嘉勝子代表)にも、「事情を話したいが機構側と連絡が取れない」との声が相次いでいる。

ユニオンが2月中旬、同機構の基準に照らして提出した返済猶予申請25件も、いまだ回答はない。19日に再度上京し、3回目の集団申請を行う。

比嘉代表は「相談者は皆、返済する意思はある。県内の雇用情勢、低所得、家庭の事情で困っているので、話し合い、一定期間の猶予など現実に即した対応を取ってほしい」と訴えた。