『毎日新聞』秋田版2009年3月10日付

リポート教育:秋大・産学官交流フォーラム 「不況時こそ大学の“知”を」

◇企業が資金、共同研究も

秋田大(吉村昇学長)の工学資源学部は6日、秋田市のホテルで「産学官交流フォーラム」を開催。西田眞学部長は企業関係者らに「不況の今こそ『知の拠点』である大学から社会に秋田生まれの技術を発信したい」と呼びかけた。学生が企業の協力を得て取り組んだ研究結果も発表された。【岡田悟】

同学部は99年、県内主要企業などを会員に迎えて「産学官連携推進協議会」を設立。情報提供や共同研究に取り組み、素材やリサイクル部門でこれまでに多くの技術が実用化されている。

フォーラムでは、製錬などを手がけるDOWAホールディングスの名村優・執行役員技術担当が基調講演。廃棄物からレアメタル(希少金属)を取り出す事業所が県内に多いことを挙げ「各部門の中で、今後は環境・リサイクル部門が会社を引っ張るだろう」と話した。同学部とは現在、八つのテーマで共同研究に取り組んでいるという。

同社は09年度から3年間、寄付講座「リサイクルプロセシング講座」を同学部に設ける。「事業の現場で生かせる技術や人材を育成したい」と狙いを説明した。

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フォーラムでは、大学の知の集積である「シーズ」と社会の側の「ニーズ」がそれぞれ紹介された。

伊藤淳・秋田銀行営業支援部次長は高齢化が著しい秋田で「地域医療モデル」を発信することや、農業に製造業やITのノウハウを活用するなどのアイデアを提案。「ピンチをチャンスととらえ、時代に応じて変化しよう」と呼びかけた。

また県環境あきた創造課菜の花バイオエネルギーチームの佐々木誠・チームリーダーは稲わらを使ったバイオ燃料の実証事業を、大学側からは斉藤準・同大ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー長が最先端の磁場計測技術を紹介した。

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同学部では、企業が研究テーマを示し資金を提供する形で、学生と共同研究に取り組んでいる。

環境物質工学専攻博士前期課程2年の角田伸弘さんは高価な希少金属の使用量を減らした自動車廃棄ガスの浄化触媒について、電気電子工学科4年の近藤雅哉さんは音のパターンを解析して一人暮らしの高齢者の異常を感知するシステムの研究成果をそれぞれ発表した。

角田さんは非鉄大手・三井金属鉱業(東京都)とともに研究に取り組み、同社でのインターンシップも経験した。「企業は研究施設の規模が大きく、納期があるため時間の流れが速い。いい刺激になった」と振り返った。