『読売新聞』2009年3月4日付

文科省中教審が参考指針


大学の学部教育(学士課程教育)で付けておくべき力「学士力」が問われている。全入時代で学生確保の競争は激化する一方だが、現在の大学には「社会の期待にこたえる教育内容になっていない」「国際社会で通用するような成果を出していない」といった声が高いからだ。

文部科学省の中央教育審議会は、そんな認識に立って、昨年12月の答申「学士課程教育の構築に向けて」をまとめた。その中で、必要な学士力の参考指針として、「文化や社会の知識や理解」「コミュニケーション能力や問題解決力など職業生活に必要な技能」「自己管理力」などを挙げた。

日本の大学の現状に対しては、「他の先進国の大学では、何を教えるかより何が出来るようになるかを重視した取り組みが進むが、日本は教育目的が総じて抽象的」「多様化が進み、学士課程を通じた最低限の共通性が重視されていない」と指摘した。

課題として、〈1〉体系的な教育課程が編成されていない〈2〉学生の学習時間が短く、授業時間以外の学習を含めて1単位とする考え方が徹底されていない〈3〉成績評価が教員の裁量に依存していて、客観性を担保していない〈4〉学生の学習意欲や目的意識が低下している〈5〉教職員の研修が教育力向上に十分つながっていない――といった点を指摘した。

◇  ◇
   「学士力」とは

 (中教審答申が示した「参考指針」)

 ・多文化・異文化に関する知識の理解
 ・人類の文化や社会、自然に関する知識の理解
 ・コミュニケーション・スキル
 ・数量的スキル
 ・情報リテラシー
 ・論理的思考力
 ・問題解決力
 ・自己管理力
 ・チームワーク、リーダーシップ
 ・倫理観
 ・市民としての社会的責任
 ・生涯学習力
 ・総合的な学習経験と創造的思考力