『毎日新聞』2009年3月2日付夕刊

公共政策大学院:地方議員に学問ノススメ 3大学院で24人 「政調費でOK」追い風


専門職大学院の一つ「公共政策大学院」へ、実際の自治を担う地方議員が通うケースが増え始めている。地方分権推進で専門知識が求められるようになったほか、使途が問題化しがちな議員の政務調査費を学費に充当することが司法判断で認められたことも背景にあるようだ。【井崎憲】

毎日新聞が先月調べたところ、全国八つの大学院のうち3大学院で24人が学んでいる。

「理論が議会活動ですぐ実践できる醍醐味(だいごみ)がある」。東京都中野区の区議会議長、市川稔さん(54)は、07年から、夜間の会合の合間を縫っては明治大大学院ガバナンス研究科の授業でノートを広げる。04年から行政の監視機能強化を盛り込んだ議会基本条例が各地で制定され「役所だけの説明に頼らない政策知識が試される」という危機感がある。

行政経験者中心の教授陣が給食費未納問題から都市再開発まで多様な行政課題を扱う。受講者には他区議や埼玉県議、栃木県内の市議もおり、研究生の2割近くが地方議員だ。

議員獲得に熱心なのは明治大で、ガバナンス研究科の授業は平日は夜間のみ。議会活動と両立できるよう配慮されており、これまで30人以上の議員や首長が学んだ。

この動きの追い風になったのが、司法判断で学費に政調費を充てることが認められたことだ。政調費は公私の区別が付かない支出で批判が根強い。明治大ガバナンス研究科の学費を政調費から支出していた練馬区議(当時)に対し区民が返還を求めたが、東京高裁は06年、「区政に還元するのが目的」と妥当性を認め、判決は確定した。

市川さんは年間130万円の学費を政調費から支払う。「判決が出て支払いに充てやすくなった」と話す。ただ、同じ研究科の議員でも政調費を充てるかはまちまちで、埼玉県議、菅克己さん(42)は「取得する学位は個人のものになる」と学費は私費から支払っている。

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■ことば

 ◇公共政策大学院
03年度に始まった専門職大学院の一つ。修了者は行政、国際機関の政策立案者への道が想定される。首都圏では早稲田大、東京大などにある。従来課程が近い立教大大学院21世紀社会デザイン研究科でも地方議員が学ぶ。

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■全国の公共政策大学院の地方議員数※は従来の修士課程

 北海道大  3
 東北大   0
 東京大   非公表
 一橋大   0
 早稲田大  5
 明治大   16
※中央大   1
※立教大   5
 京都大   0
※同志社大  1
 徳島文理大 0
 (2月末現在)